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2024.10.10

勝負服がユニフォームからスーツに変わりました

勝負服がユニフォームからスーツに変わりました
#8 石川佳純(元プロ卓球選手)
オリンピックという舞台で三大会連続のメダル獲得という偉業を成し遂げた、元プロ卓球選手の石川佳純さん。パリオリンピック2024ではキャスターとして大会を盛り上げ、SNSでは「今大会No.1レポーター」と評されるほどの人気を得ています。そして現在、洋服の青山の「ゼロプレッシャースーツ」、2024秋冬レディスのCMに出演中。そんな彼女に、これまでのキャリアやファッションについて、さらにはその裏側にある思いを語ってもらいました。

CM撮影中、モデルさんのように自然なポーズを決める石川佳純さん。その動きに驚いていると「14歳の頃から、スポーツウェアのカタログでモデルをやっていたんです」と、その理由を笑顔で明かしてくれた。ファッションは高校生の頃から大好きと語る、石川佳純さんのキャリアとファッションにまつわる話とは?

Q1. パリオリンピック2024が終わったばかりですが、現在取り組まれている主なお仕事を教えてください。

「47都道府県を巡る、卓球教室をやっています」

「石川佳純47都道府県サンクスツアー」という卓球教室を、小中学生を対象にやっています。

私は7歳で卓球に出会って、目標に向かって頑張ることの楽しさなど多くを学ばせてもらいました。そういう思いやスポーツの面白さを感じてほしくて、卓球をしている子どもだけでなく、スポーツをやってみたい子どもたちにも参加してもらっています。また、長い現役生活の中でたくさんの方に応援してもらったので、その感謝の気持ちを直接会って届けたいという気持ちもあるんです。

Q2. 普段、スーツを着る機会はありますか?

「前回のCM以来、スーツを着る機会が増えました」

現役時代はスーツを着る機会がほとんどなかったんです。まさに、4年に一度オリンピックへの渡航時に着る服という感じでした(笑)

でも、前回の「ゼロプレッシャースーツ」のCM(2024年3月)をきっかけに、さらにはオリンピックに関わることにもなって、スーツをたくさん着るようになりました。今では勝負服がユニフォームからスーツに変わったようにも感じます。

Q3. パリオリンピック2024のキャスターをされた際、ファッションで意識されたことやこだわりを教えてください。

「その日に取材する競技を自分なりにイメージして選びました」

スーツを着ることによって、気持ちのスイッチが入るというかシャンとするんです。オリンピックのキャスターは初めての挑戦だったので、一緒に戦ってくれるような気持ちでスーツを着ていました。

パリでは長時間着ていることが多かったので、着やすさを重視しながら、明るい色味だけど派手すぎないものを心がけました。とくに「ゼロプレッシャースーツ」はたくさん着ましたよ。

スーツ含め10着くらい持って行ったのですが、その日に行く競技のイメージや、その日の気分も取り入れながら選んでいました。これまで、スーツは単色で上下お揃いというイメージがありましたが、パンツとジャケットを違う色にしたりなど、いろいろとバリエーションで遊べることに気づいたのも嬉しい収穫でした。

Q4. ご自身の中で大きな転機となった「アクション」を教えてください。

「自問自答を続け、引退を決意したとき」

7歳から23年間もやってきたので、私にとって「卓球」は人生の中にある当たり前のものでした。それを辞めるかどうか、東京オリンピックが終わったくらいから考えるようになったんです。

引退後にどうなるか不安も大きかったですし、それまでは当たり前のように具体的な「目標」や「夢」がある生活をしてきたので、次の目標が明確に描けない不安もありました。でも、ずっと自問自答を続けた結果、「自分の中でやりきった」という思いが大きくなったんです。

なので、大きな転機となったアクションといえば「引退を決意」したことですね。新しいチャレンジをしてみたいと思うと同時に、新しい扉を開けてみようと思ったんです。これまで私を鼓舞し続けてくれた家族からも「頑張ったんじゃない?」と言ってもらえて、辞める決断ができました。

Q5. 現役引退以降、ファッションは変わりましたか?

「スカートを穿いたり、デニムを着たりするようになりました」

休みの日は疲れて寝ていることが多かったので、選手時代はジャージばかりでした。でも、もともとファッションは好きだったんです。引退後はいろいろなところに買い物へ行ったり、いろんな服を着て楽しむようになりました。スカートを穿いたり、デニムを着たり、気分によって変えるようになりました。

Q6. プライベートのファッションで意識されていることやこだわりについて教えてください。

「Tシャツにワイドパンツとか、ラフなスタイルが多いです」

高校生くらいからファッション雑誌を見るのが大好きになって。海外遠征に行くときはいつも、雑誌をたくさん買ってから搭乗していたんです。練習ばかりの生活だったので、あまり買い物に行くことはできなかったですけど、想像して楽しんでいたんですよね。それがリフレッシュにつながっていたのかもしれませんね。

最近はカラフルなものやタイトなものをお仕事で着る機会が多いので、普段はオーバーサイズでラクな服装をしていることが多いです。カラフルなTシャツにワイドパンツとかですかね。

似合うかどうか試着して確認したいので、ネット通販よりもお店に買いに行く派。ファッション情報も、ネットで見るより雑誌のほうが好きなんです。

Q7. これからチャレンジしてみたいことがあれば教えてください。

「英会話をマスターして、さらに人生を楽しみたい」

まずは「サンクスツアー」の47都道府県を完走させたいです。

新しいチャレンジとしては英会話ですかね。言い出してから一年半くらい経っているんですけど(笑)。中国語を覚えてから、海外の友人も増え、自分の視野も広がって、人生が豊かになったと感じています。なので、英語が話せるようになったら、さらに世界が広がってもっと人生が楽しくなるんじゃないかと思っています。

卓球界に限らず、スポーツ選手を引退しても輝いている方って皆さんエネルギッシュ。なので、私もエネルギッシュに常に成長できるような、新しいことにチャレンジしていける自分でありたいと思っています。

Q8. 今後、ファッションで挑戦したいことを教えてください。

「すごく派手な服など、いろいろなスタイルに挑戦したいです」

カラフルな洋服が好きなんですけど、ついついネイビーや黒などのモノトーンが多くなってしまうんです。なので、すごく派手な服を着てみたい。世の中にはいろんなタイプのファッションスタイルがありますけど、すべてに挑戦してみたいですね。とにかく、いろんな服を着てみたいです。

Q9. ご自身のお仕事の中で、服装が与える影響や効果があれば教えてください。

「服装で気分が変わるからこそ、ファッションを楽しみたい」

着る服によって、自分の気分やテンションって変わると思うんです。スーツを着たときは、ちゃんとした気持ちになりますし、ジャージを着ればリラックスした気持ちになる。

だからこそ、ファッションを楽しみたいんです。服装だけでなくピアスにこだわったり、あとメイクもそうですよね。見た目にはわからないくらいの違いでも、自分の中では気分が変わる。そんな感じで、インタビューをするときはヒールに履き替えるんです。緊張感が高まる感じがして、ヒールもすごく好きなんです。

Q+1. 選手にインタビューをする際、心がけていることを教えてください。

「試合直後の素直な気持ちを話してもらうために、どのように質問をすれば選手が話しやすいかということを考えて質問をしますね」

オリンピックなどで戦う選手の思い、そのときに感じた率直な気持ち、そういう本音が聞けるよう心がけています。自分自身、選手を経験してたくさんインタビューをしてもらってきたので、答えやすい質問、答えにくい質問というのがわかっているつもり。そこをうまく引き出せたらと思っています。

たまに、選手に言ってほしい言葉が最初から決まっていて、それを答えるまで終わらないことがあるんですよ。そうなると本音を語りづらくなるし、喋るチャンスを失ってしまう。なので、そういうことだけは絶対にしないと決めています。

「現役時代は目標が細かく決まっていて、勝ったら正解、負けたら失敗ってすぐに結果が出たんです。でも、今の仕事は結果がすぐに出ない。そこに戸惑うこともあるんですけど、今日のことだけを考えるとか、今日一日を精一杯やりきると、思わぬ結果を生むこともある。それが新しい発見で、すごく今が楽しい」と語っていた石川佳純さん。ポジティブに新しい毎日に挑む姿を見ていると、本人ですら想像できない素敵な未来がすぐにでもやってくるように思えた。

編集・文:富山英三郎 写真:高柳健

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