どんな服を着ても高橋愛らしさが出るんです
モーニング娘。やハロー!プロジェクトのリーダーとして、歌やお芝居で大活躍した高橋愛さん。卒業後は、プライベートブランドを立ち上げたり、SNSで発信をするなど、さらに活動の範囲を広げています。コーディネートを紹介するアプリ『WEAR』のフォロワー数は、なんと262万人!ファッションアイコンとしても大きな影響力を持つ彼女に、キャリアとファッションについて語っていただきました。
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高橋愛さんは、ご自身のYouTubeチャンネル『高橋愛lab。』やファッションアプリ『WEAR』での、飾らない等身大の発信が広く支持されています。素敵なワンピース姿で取材場所に現れた高橋さんは、にこやかに、自然体の飾らない言葉でインタビューに答えてくれました。
Q1. 最近、取り組まれていることを教えてください。
「仕事と遊びがつながりはじめました」
YouTubeを始めてから、いろいろなことができるようになっています。例えば、ダンス&ヴォーカルユニットを作って、それを旦那さん(註:お笑いタレントのあべこうじさん)がプロデュースしたり、自分たちでグッズを作ってみたり。あとは自分で歌詞を書くなど、今までやったことがなかったことにもチャレンジしています。
SNSで発信するようにしてからは、ゲームとか宝塚など、自分の好きなことがお仕事につながるようになりました。次第にお仕事と遊びの境界線があいまいになったというか、両方がいい意味でつながるようになっています。
Q2. スーツを着るのはどんなときですか?
「自分がシャキッとしたいときにスーツを着ます」
きちんとした交渉に行くときなど、自分がシャキッとしたいときに着ますね。襟を正したいときというか……。スーツって、着なきゃいけないとか、着せられていると思うと、少しモヤッとするじゃないですか。そうじゃなくて、これを着たら自分の気持ちのスイッチが入るとか、相手に対して誠意を見せられるとか、モチベーションを高めるために着るものだと思います。
小学校、中学校と制服の学校でしたが、たまに私服登校の日があったんです。そうすると、学ランだと格好よく見えた人が、私服だとそうでもなかったり(笑)。スーツにも学ランと同じように、人を格好よく見せるマジックがあると思っています。
Q3. 仕事に出かけるときのファッションで意識していることを教えてください。
「ファッションは自分の気分で楽しく選ぶ!」
もちろんTPOはわきまえているつもりですが、基本的には自分の気分で選んでいます(笑)。とは言っても、スーツを着るなら髪もシャキッとしたほうがいいだろうからピンでまとめたり、アクセサリーは少し小ぶりのほうがいいかなとかは考えて、自分の気分と合わせて楽しく選んでいます。
Q4. ご自身の仕事の中で大きな転換となった「アクション」を教えてください。
「自己を確立したほうがいいというアドバイスが契機になりました」
2011年にモーニング娘。を卒業して個人で活動していますが、5年ほど前に、ある方に「自己を確立したほうがいい」と言われたんです。正直に言って、その瞬間には意味がわからなかったんです。でも、「自己を確立したほうがぶれない」と言われたことが引っかかって、今この言葉をいただくということは、自分にとって必要な言葉かもしれないと考えました。
それから、何かをやろうというときにはこの言葉を思い出して、仕事に向かうスタンスも変わり、考え方も変わり、自分から発信するようになったんです。だから、今のようなアクティブな人間になったのは割とここ最近だと思います。
Q5. オンとオフで、ファッションは変わりますか?
「何を着ても、高橋愛らしさがあると思います」
「WEAR」というアプリに、日々自分のコーディネートをアップしているんです。それを見返すと、オンのときもオフのときも、変わらず好きなものを着ているなって。自分の中の流行はあるにはあるんですが、すごく流行っているものを着ても、ハイブランドを着ても、高橋愛らしさみたいなものがあるように感じます。
うまく言葉にできないのですが、合わせ方だったり、小物の選び方に私らしさが出ているように感じます。私はモデルの鈴木えみさんがすごく好きで、とても尊敬しているので、えみさんが着ているものはなんでもかわいいと思うんです。でもあたりまえですけれど、同じ靴を履いても、えみさんと同じにはならないじゃないですか。だから自分らしく装うということは、大事だなと感じています。
Q6. お仕事のキャリアとファッションの変化の関係についてお聞かせください。
「仕事もプライベートも自分らしくやればいい」
新メンバーとしてモーニング娘。に加入して、4年間リーダーをやらせていただいたんですけれど、グループに在籍していた10年間はずっと「ちゃんとしなきゃ」と思っていました。自分の頭のなかで、「仕事とプライベートを両立しなければいけない」と、自分を制御している部分があったんです。
でも、もともとそういう人間ではないし、プレッシャーを感じることもありました。卒業してから「ちゃんとしなきゃってだれが言ってるの?」と旦那さんに聞かれたときに、「そうか、自分で言っているだけだ」と気づいたんです。それからは、仕事もプライベートも「自分らしくやればいいんだ」と思うようになって、ファッションも自分の気分で、好きなものを選ぶようになりました。
Q7. 環境やサステナビリティについて考えていることがあれば教えてください。
「SDGsはあくまで自分のために、楽しく取り組んでいます」
身近なことだと、出先でペットボトルを買わなくて済むように、自分で飲み物を作って持ち歩くようにしています。環境にいいというのもありますが、買って飲むことが減れば自分としても節約になるじゃないですか。だから、あくまで自分のために、楽しみながらやっているというスタンスです。やるからには自分のテンションも上げたいので、お気に入りのマイボトルを購入しました。
あとは、外食するときにオーガニックなものを選んだり、石鹸を選ぶときに成分をよく見るようにしています。これも、「自分の身体にいいから」というのが一番の理由で、結果的に環境負荷を小さくすることにつながっているという感じです。振り返ると、モーニング娘。の在籍時に安倍なつみさんがオーガニック食品にこだわったり、ご自分でお弁当を作ったりなさっていたんですね。安倍さんのような先輩の存在によって、環境について意識するようになりました。
Q8. 今後、ファッションで挑戦したいことがあれば教えてください。
「着なくなった洋服を有効活用したいです」
「着なくなった洋服をどうするか」ということを考えています。後輩にあげたりもしていますが、それだけでなく、もっと活用したいと感じています。そんなことを考えているとき、着なくなった服を組み合わせて、まるで別の服やアイテムとして生まれ変わらせるのもアリかなと思っていて、私のYouTubeチャンネルでも取り上げています。妹は洋服作りが得意なので、ワンピースの生地を切ってこのシャツに貼ってリメイクしてみようとか、一緒になって楽しみながらやっています。
Q9. ファッションや洋服選びにおいて、大切にしていることをお聞かせください。
「価値があるものを選んで、長く大切に使いたい」
今は低価格の洋服があふれていますし、私も好きなアイテムがあれば買ったりもします。一方で、価値があるものを選んで、大事に長く使うことも大切だと思っています。ジャケットだったりアクセサリーだったりバッグだったり、少し背伸びしたものを買うために頑張ることは仕事のモチベーションにつながるじゃないですか。
物心ついたときから洋服やファッションが好きで、お小遣いを貯めて買ったものは、今でも大事にしています。ファッションが好きだからこそ、そうした気持ちは忘れないようにしたいと思っています。
Q+1. 気分をシャキッとさせるスーツと、ステージ衣装は似た存在ですか?
「スーツとステージ衣装には似ているところがあります」
そうかもしれません。衣装を着て、メイクもして、お客様が見ているステージに上がると、上下ジャージ姿のリハーサルのときにはできなかったような演技ができることがあります。自分の気持ちを盛り上げて、きちんと相手と向き合うという意味では、スーツとステージ衣装は似ているのかもしれませんね。
インタビューと撮影の合間に、高橋さんは出身地である福井県の「ふくいブランド大使」を務めていることについて語ってくれた。曰く、「時々、お仕事という感覚が希薄になって、趣味のように楽しんでしまう」とのこと。それはSNSでの発信と同じで、仕事とプライベートの境目が曖昧になっていると感じているという。つまり、プライベートの充実が楽しい仕事につながり、よい仕事をすることでプライベートが豊かになるという好循環のなかにいるのだ。
そんな好循環の秘密は、「今この言葉をいただくということは、自分にとって必要な言葉かもしれないと考えました」という発言にあると感じた。周囲の意見を素直に受け取ることができたからこそ、素敵なキャリアを積むことができたのだろう。
編集:富山英三郎 文:サトータケシ 写真:高柳健