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2024.02.26

働くスタッフの満足度があがれば、お客さまの満足度があがる

働くスタッフの満足度があがれば、お客さまの満足度があがる
働き方をはじめあらゆる価値観が激変し、環境への配慮が切迫した課題として目の前に迫るなか、青山商事の未来への布石を探る「青山商事のサステナブルな話」。ここまでは青山社長を筆頭に経営と商品開発の視点から青山商事の活動を探ってきたが、今回は「洋服の青山」の基幹事業であり、アイデンティティーであり、そしてお客さまと直接向き合う重要な場でもある店舗運営にその視点を移してみた。今回話を聞いたのは、洋服の青山 東京西ブロック三沢亮介ブロック長。いま販売の最前線で起きていること、そして現場で感じる社会の変化を聞いた。

洋服について語れるって恰好いいな

2002年入社、販売員としてキャリアを歩みはじめてから洋服の青山一筋21年となる三沢亮介ブロック長。現在、東京都西側の20店舗を統括する現職に就いて2年目になる。これは社内のブロック長の中でもかなり若手だが、一方で入社してから店長になるまで10年かかったというスロースターターでもある。「なかなか自信が持てず、時間がかかってしまいました」という三沢ブロック長に、まず入社の経緯を聞いてみることにした。

「学生時代、誰かに洋服選びの意見を求められても上手く答えられなくて、それが本当に不甲斐なかったんです。でも上手い友人もいて、洋服について語れるって恰好いいなと憧れていました。服飾の専門学校に進んだのもそんな理由からでした」

志望動機は、洋服の青山でのスーツ購入体験

専門学校も卒業という頃になると、今度はアパレル産業そのものの“敷居の高さ”を感じるように。友だちに洋服をアドバイスして喜んでもらいたいという原点に立ち返ったときに思い出したのが、洋服の青山で成人式のスーツを買った体験だった。

「はじめてのスーツの購入体験だったんですが、ファッションブランドのお店で洋服を買うのとはまるで違ったんですよね。自分との距離感も近く感じましたし、服選びのアドバイスも親身になってしてくれました。それは自分がやりたかったこととかなり似ていましたし、人のためになり喜ばれることに魅力を感じて、洋服の青山で働きたいと思いました」

東京・武蔵村山の店舗ではじめて店長に昇格すると、東村山店を経て、立川北口店のグランドオープンに携わり上級店長に昇格。その後2年東京本部営業部で経験を積み、北千住店の移転オープン、新宿東口店、アウトレット新宿店の店長を歴任する。試験的な試みだったアウトレット業態は、在庫のスーツのサイズが限定されるなど販売には難しさがあったが、三沢ブロック長は見事に目標の数字をクリア。その実績は社内でも高く評価されブロック長に昇進。

ご自身はどんな店長でしたかと尋ねると、「みんなと一緒にやるというスタイルでした」と即答。トップダウンではなくスタッフ目線でひとつのチームになることを重視していたという。

「店長になってもまだ自分のなかでは自信がなくて(苦笑)。他の店舗の店長のようにカリスマ性があってリーダーシップがあって、という店長像ではなく、みんなで考えるというスタイルでした。実際のところ、いい仲間に助けられてきたと本当に思います」

個人を尊重するための深いコミュニケーション

販売員を仲間と呼び、そして“一緒にやってきた”と繰り返す自分のスタイルは、個人を尊重する意識が高まってきた時代の変化にマッチしていたようだ。

「とにかくコミュニケーションをとって、個々人の性格を理解して寄り添うことに努めてきましたし、それは今も変わりません。従業員のモチベーションが上がることでパフォーマンスが良くなることは間違いありません。“仲間のために頑張ろう”と思ってくれている人は能動的に考えるぶん、仕事の効率も高いですから」

経営において必要とされる観点の頭文字を並べたESG(Environment, Social, Governance)におけるSocial(=社会)。ここでいう社会とは、誰もが安心して生活できる豊かな社会をいう。そこには個人の意志や自由が尊重されることも含まれる。

「販売員が20人いたら20通りの伝え方をしていました」。そんな組織運営が功を奏し、2012年から2017年までの5年間で、目標の売上を達成できなかったのはわずか6カ月。リーダーの立場にあぐらをかかず、販売員=個性を尊重することで成果をあげてきた。

ブロック長になってからも店長との月例会では「いまは私に対しては何を言ってもいい」という前提を作り、自由な意見を汲みあげつつ、各店長にも同じやり方で販売員それぞれの声を聞くように働きかけている。風通しの良い環境を作り上げたことで、いまでは店舗、スタッフのさまざまな情報が自然に集まる。

かつて店長を勤めた新宿東口店では、社員とパートナーあわせて20名の中に外国籍のスタッフもいて、頭ごなしの言い方ではマネージメントはできなかった。ひとりひとりの個性と向き合うことの重要性を深く考える経験となった。

自ら声をかけ、休みやすい文化を作る

統括しているブロックでは、販売員の半数以上が女性だ。役職者の割合も、女性が30%にも及ぶのだという。 その背景にあるのは、全社で取り組んでいるワークライフバランスの推進。育児休暇や時短勤務という制度を活用しやすくする現場での環境づくりが必須だ。

※内閣府の資料によると、プライム市場上場企業の女性役員(取締役、監査役、執行役)の比率は2022年7月の11.4%から2023年7月は13.4%に上昇した一方、女性役員がいない企業が2022年には18.7%、2023年も10.9%あった。
出展元:東証プライム企業の女性役員比率「2025年に19%」 政府、「2030年30%」へ中間目標:朝日新聞SDGs ACTION!

単一店舗ではなかなか実現が難しいフレキシブルな働き方も、700店舗にも及ぶ店舗を持つ洋服の青山なら実現できる。三沢ブロック長のエリアは20店舗もあるので柔軟な人員配置が可能だ。そのうえで産休に入りそうなスタッフがいれば記録をしておき、スタッフ自らの申し出がなければ声掛けを行い、育休取得を促すという形をとっているという。

「ライフイベントへの対応だけでなく、世代間の価値観の違いにも適応する必要があります。若いスタッフほどプライベートを重視しますし、その傾向は年々強くなってきています。会社は優秀な人材に長く働いてほしいと考えるものですが、そのためには働きやすい環境を提供することが重要です。彼らの価値観にあわせて環境は変えていくべきでしょう」

店長時代から実験的に取り組んでいる「ノー残業シフト(何があっても絶対に定時で帰す)」などは、特に若手が多い店舗ではモチベーションアップに有効だそう。今後はブロック全体に取り組みを広げようと考えている。

働くスタッフの労働環境への満足度が上がれば、自然と能動的なサービスにつながり、お客さまの満足度があがる。それによって会社の売上も利益も向上する。だからまず重要視するのはスタッフである。それが自分のスタイルだと三沢ブロック長は言い切る。

販売員だったころには、上意下達の指示に腹落ちしないまま働いていたこともあったという三沢ブロック長。深いコミュニケーションを図るという自分なりの方法で、ひとつのチームとなり成果を出すというスタイルを築いた。

気がつけば立ち返っていた「原点」

インタビューの最後に、スタッフが直接介在しないECと実店舗の違いについて尋ねた。

「対面でお客さまの要望を伺い、お客さまご本人を知り、より深い満足感を提供できるということは、ECはもちろん他のアパレルにもない、洋服の青山の店舗の価値だと思います。ご友人の結婚式に出席するためにスーツを買いにいらしたお客さまのお話を伺ううちに、実はお客さま自身が式場での出会いを期待しているなんていうこともあるわけです。だったらカラーシャツよりも白のシャツのほうが清潔感ありますよとか、この小物を差したらオシャレに見えて好感度高いですよ、なんていう提案ができます。新社会人の方であれば、実家暮らしかどうかによって必要なシャツの枚数だって変わりますよね。ECでは聞いてくれないことを、提案できるのが店舗だと信じています」

学生時代は友人の服選びのアドバイスができず、服飾の専門学校で学んでもファッションブランドと距離を感じていた三沢ブロック長。自分のためではなく、誰かのため、自分の働きやすさよりもみんなの働きやすさを第一にしてきたスタイルはこれからも変わらないようだ。

文:青山鼓 写真:高柳健 構成:前田陽一郎

[社会] 人材育成と働き方 | 青山商事

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