安心して働ける場所としての青山商事をつくるため
人が育つ環境をいかにつくるかだけを考えて
「いろんな仕事を経験してきて、人と人、会社と会社を繋ぐことに携わってきたおかげで、今がある」とお話しいただいた遠藤管理本部長
1990年に青山商事に入社した遠藤管理本部長は、多くの社員同様に店舗での販売からキャリアをスタートした。来店するお客さまはもちろん、接客する販売員のモチベーションの維持と向上に注力してきたそう。結果、全国規模で見ても突出した成績を残すに至った自身の経験について、「人が育つ環境をいかにつくるかだけを考えてきました」と話す。
のちに本社勤務になってからは社員教育や、デジタル活用といった分野で活躍、東日本の採用責任者に抜擢された。そこでは営業店で培った、人を成長させるという遠藤管理本部長のポリシーが活かされたそうだ。
「採用担当としては400人以上の社員の採用に関わったでしょうか。約9年採用を担当しましたが、一人ひとりのことはちゃんと覚えています。面接の時のノートも残っていますよ」
当然詳細はお見せいただけなかったが、本文中にもあるように、面接時に使用されるノートには面接時の入社希望者の特徴や気になったことがびっしりと書き込まれている
そういって見せてくださったノートには、青山商事でどのような貢献がしたいかといった一般的な志望動機に関わることだけではなく、採用とは関係ないながらも面接時に気づいた、その人の成長のためのヒントとなるようなキーワードがいくつも書き込まれていた。
「志望動機や履歴書に書かれていることは大抵の場合、卒なくできているわけです。もちろんそれも大事ですが、私が採用面接時に心がけていたことは、その人自身についていかに掘り下げていくかでした。その上で面接の最後にね、今後の成長のためにどのような課題があり、どのように取り組んでいく必要があるかをフィードバックさせていただくんですよ。あなたはこういう傾向があるから、今後はこうしていくといいと思いますよ、と」
「青山商事で働けば、自分は成長できる」と思ってもらえるように
遠藤管理本部長の人を見る目、洞察する力は鋭い。面接という限られた時間のなかで、的確に課題を抽出し、採用不採用に関わらず、面接に来てくれた若者たちの成長のための道筋を示す。その遠藤管理本部長のフィードバックの的確さに驚き、親身なアドバイスに感動し、涙を流す人もいたという。
「なぜそこまでするか。それはこちらが選ぶ立場で人を見定めるのではなく、面接にいらっしゃる方は、青山商事に入社して私たちと働いてくださる、または青山商事を選んでくださった人だと考えているからです。面接の場では、ある意味では青山商事がその方にとって印象に残ることが大事だと思っていました」
人事制度を磨き上げながら、社員の成長も促す体制づくり
「正直にありのままの青山商事を伝えること」を心がけていたがゆえに、販売という現場がいかに大変かについても面接時に繰り返し伝えてきたという。現実の厳しさを伝えた先に、給与体系や女性活躍のための人事制度、福利厚生といった点の充実をアピールすることで、「青山商事は正直な会社」であり「入社すれば人として成長することができる会社」であることを印象づけたかったそう。
「自己研鑽を積み、努力をしていくことは社会人として当たり前のことではあるのですが、そんな意識を強く持っている方にとっては、どの企業で働けば自分が成長できるかということが大事ですよね。その一方で、ワークライフバランスを重視した安心して長く働ける会社を求めている方も大勢いらっしゃる。そのためには『えるぼし認定』や『プラチナくるみん』で評価されているように、人事部として制度を整えていくことも行わないといけません」
2018年に立ち上げられた人事戦略本部では、そんな遠藤管理本部長の考えを強く反映した「人は最大の資産である」ということが強く打ち出されている。
「従業員にとってより良い人生につながる人事制度の抜本的な見直しとそのブラッシュアップ、それから現場で行われてきた社員教育を包括的かつ戦略的に一元管理していくために作られたのが、人事戦略本部です」
「売上を上げようと思ったら、やっぱり人なんですよ」と遠藤管理本部長。商品知識を持つ販売員、そして彼らの接客レベルを上げてお客さまの満足度を高めていくことが重要だと、長い経験から確信している。
そんな販売員が育つために重要だと遠藤管理本部長が考えているのが「この人についていけば自分は成長できる」と思えるようなリーダーの存在だ。今後のZ世代からα世代といった新しい時代を切り開く世代に向けて、そんな存在を育成していくことにも力を入れていきたいという。
安心して働ける環境づくりとその可視化。こちらは「プラチナくるみん」の認定証
女性社員が目立つ本社のオフィスで。面接した社員は全員記憶しているそう
選ばれる青山商事、安心して働ける場所をいかに作るか
「女性の活躍もこれからの時代には必須です。現在、採用段階では新卒の6割が女性です。しかし退職される方が多いのも事実。それは制度が整っていないからですよね。制度の充実により働き方を考えていくべきだと思います」
女性活躍に力を入れ、社内の環境を整えていくと話す一方で、直近で青山商事が行った興味深い取り組みについても教えていただいた。「奨学金返還支援制度」だ。
「2024年の6月に発表した制度なのですが、日本学生支援機構やその他青山商事が定める奨学金を利用している学生が入社した場合、弊社から規定の金額を支援するという制度です。青山商事の一員となった以上、返済の労苦を少しでも軽くして、安心して働くことができるようにと、このような取り組みを始めることにしました。これも青山商事が選ばれる企業になるための取り組みの一つです」
進学のために必要な奨学金だが、入社して年次の浅い社会人がその返還に苦しんでいるということも社会課題のひとつ。そこにも青山商事は切り込んでいくという事例だ。
「奨学金返還に対する社会課題に、青山商事としてできることを検討する中で、支援制度の存在を知り、当社従業員にも導入したいとの思いが強まりました。また、より深く調べる中で同業他社含め、この制度を採用している企業が少ない点も当社に導入する活力となりました。やるなら最初に、当社の取り組みが好事例として広まれば、社会課題への解決にもつながっていくはずです。人が育つ環境をつくることが当社の持続的成長に繋がるとの思いから制度導入を実現しました」
「関わってくださるすべての人が笑顔になれる青山商事」を目指す、それは同時に企業価値の向上にも直結する重要な取り組みだ。そのためにも「働く環境づくり」を整えていきますと語ってくれた。
構成:前田陽一郎 文:青山鼓 写真:高柳健