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2024.02.07

「いま、ちょうどいい服を届ける」青山商事らしいレディースウェアの取り組みとは

「いま、ちょうどいい服を届ける」青山商事らしいレディースウェアの取り組みとは
「働く人のために働こう」という青山マインドのもとに、ビジネスウェアを提供し続けてきた青山商事。今回は「働く人」のなかでもレディースに焦点を当てて、レディス事業部 田中美穂グループ長に話を聞いた。女性活躍を積極的に後押ししようとする現代において、必要とされるレディースのビジネススーツとは。そして青山商事にできることとは。青山商事が社会に求められる企業であり続けるため、なにを考え、これからなにをしていくべきかを探る連載の第5回。

ビジネスウェア事業を成長させるため青山商事が力を入れているレディース事業。2022年度には約218億円の売上があり、事業部としてもさらなる成長を目指している。

そのようなレディース事業において、グループ長を務めレディースアイテム全体の商品戦略に携わっているのが、2008年入社の田中グループ長だ。

「会社がレディースに力を入れはじめた時期に入社して、商品がどんどん充実していくのを目の当たりにしてきました。入社当初は黒っぽいスーツしかなかった売り場に、ストライプが入ったスーツが並ぶようになり、スカートの形にバリエーションが増えていくにつれ、売り場のスタッフと“これでもっと提案ができる”と、喜んだものです」

3つの店舗で販売に従事してきた田中グループ長が最後に勤めた店舗が、当時渋谷にあった店舗。ここは青山商事が初めてレディースの専門フロアを作るという意欲的な取り組みを行った場所でもあった。

「男性のスーツのイメージが強かった『洋服の青山』にとって、レディースの専門フロアを構え、女性スタッフがお客さまをお迎えするというのは、エポックメイキングな店舗だったと思います。当時は、レディースがわかるスタッフが全国でも少なかったこともあり、近隣店舗にいたわたしも呼ばれて渋谷の店舗でレディースを販売していました」

日々お客さまと接するなかで田中グループ長が実感していたのは、渋谷でショッピングをする若い女性の間に、意外にスーツの需要があること。就職活動や入社のタイミングだけでなく、日常的にビジネス用途のお客さまが実は多数いる、ということだった。

同時に、そんなお客さまに相対する日々のなかで、商品について「ちょっと惜しいんだよな」「ここがこうなっていたら買っていただけたのに」など、商品への具体的要望もどんどん高まっていったという。

そんな田中グループ長が商品部に異動となったのは2012年。以降、現在の山本商品本部長のもとでレディースアイテムの企画やバイイングに携わるようになる。

メンズとは全く違う、レディースの選び方

「一概に決めつけることはできませんが」と断りながら、メンズとレディースとの大きな違いは、お客さまの服に求めるプライオリティの違いだと語る田中グループ長。

「男性は、説明を重ねることで商品への距離が近づく傾向があるように思います。生地の話、機能の話、技術の話など、商品に関する情報を並べていくと徐々に商品に興味を持っていただけるようになると感じます」

「かたや女性は、試着した際の印象次第。これを着ることで自分がよく見えるかどうか。どんなに色や柄がかわいくて形が気に入ったとしても、フィッティングで自分が思ったようなスタイルにならなければ購入スイッチは入らないように見受けられます」

「店舗に一歩足を踏み入れたときの全体の印象も重要で、“いまの気分にちょうどいいもの”がありそうだと思われなければ、商品を見ることなく立ち去ってしまいます」

そのような女性のお客さまには、服の機能性や素材の上質さ、縫製の丁寧さといった、服の付加価値は購入時の後押しや、購入後の満足にすぎない。「買うスイッチが入る」売り場の雰囲気作り、そしてメンズよりも徹底したシルエットのこだわりが重要であるということは、田中グループ長が日々強く意識していることだ。

時代の「ちょうどいい」を捉えたヒット商品

近年のヒット商品は2021年度に全店で取り扱いを行い、わずか2ヶ月で投入数に対し約9割の販売実績を記録したという「紺ブレ」。現在でもアップデートを重ね、定番商品として常に売上ランキングの上位にある人気アイテムだ。

紺ブレのヒットの背景にあるのは、女性の働く服の多様化が加速したことだ。2019年から青山商事ではセットアップのスーツのほか、単品のジャケットやパンツといった仕事着の多様化にアジャストしたアイテムを徐々に増やしてきた。新しいアイテムはまず一部店舗に投入してお客さまの反応を見るが、この紺ブレはその店舗であっという間に人気商品になったのだそう。

「約700店舗で売れるかどうかというとまた別の話になりますし、数量も多く投入する必要があるので判断はとても慎重になります。さらにこの紺ブレは極端な特徴があるアイテムでもなく、なぜ売れそうかということを理論的に説明することが難しい商品でもありました。ではなぜ売れたのかというと、オフィスウェアのカジュアル化や、女性服のトレンドといった“いま、ちょうどいい”にぴったりハマったということなんです」

すべてのお客さまに服で安心を届ける

流行っているから、ということだけではお客さまはもちろん、社内の商品開発メンバーを説得することはできない。そこで大切なのは「安心感」なのだと田中グループ長は語る。

「レディースの担当者が軸としていることのひとつが“すべてのお客さまに服で安心を届ける”というコンセプトです。価格の安心、時代遅れにならない安心、相手に失礼にならないという安心など、「青山らしい安心」をどうしたら提供できるかをいつも考えています。トレンドも追わないわけではありません。大事なのはタイミングです。ハイブランドからマスファッションに拡大するちょうどいいところで店舗に商品を置けるかどうかがポイントです」

ちなみにこの紺ブレは、「プラスチック・スマート」に賛同し、リサイクル原料を使用している。裏地にもペットボトルから再生したリサイクルポリエステルを使うなど、環境問題に配慮したアイテムでもある。

サステナブルな活動と商品作りは企業として避けては通れない問題だ。田中グループ長も取引先から提案される新素材に常に触れ、商品化への道筋について常に議論を重ねているという。とはいえ、サステナブルやエコロジーへの取り組みは重要な課題ではあるものの、日本においてはまだ直接的な購入には繋がりにくい要素だそう。

「サステナブルな素材というのはまだまだ高コストということもあって、商品に取り入れるには難しい面があります。とはいえ、ここ数年の社会全体の環境意識の高まりを見ても積極的に取り組むべきだとは本当に思いますね。売れるからサステナブルをやる、すでにそういう段階ではないのだなと理解しています」

青山品質の「いま、ちょうどいい服」で女性を応援

一般的なレディースの洋服の品質基準と比較して、青山商事が掲げる品質は極めて高い。取引先からも「他社の品質基準では通る品質が青山さんの品質基準では通らない」としばしば言われてしまうと田中グループ長が苦笑混じりに話すほどだ。
「長年にわたって紳士服を販売してきたことで、まず集客の面で他のレディースのオフィスウェアを提供しているブランドに対してのアドバンテージは確実にあります。さらに、ものづくりの面からいってもメンズのスーツづくりで切り拓いてきた高い技術を持つ生産背景は、大きな自信でもあります。レディースカジュアルだけを縫う工場と、ウールを含む構築的なスーツやジャケットを縫う専門工場では文化が全く違いますから。これらをバックグラウンドにしたわたしたちのレディーススーツの品質には自信を持っています」

15年にわたり青山商事でレディースウェアに向き合い続けてきた田中グループ長。時代が求める服を察知するうえで、「約700ある店舗の販売員の声は、数字以上にお客さまが求めるものを的確に教えてくれる」と現場からの声に絶大な信頼を置く。

そんな全国に張り巡らせたアンテナを武器に、「いま、ちょうどいい服」をこれからも提供し続けることに努めていくという。その上で、「サステナブルな社会の実現を高品質な洋服作りで支えることの価値は高い」と胸を張る。

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文:青山鼓 写真:高柳健 構成:前田陽一郎

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