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2023.10.02

社会から求められ続ける企業であるために

社会から求められ続ける企業であるために
目まぐるしく変貌する私たちを取り巻く社会と、世界規模の課題である環境問題に対して、洋服の青山ができること。グループの活動を一貫したものとしていくために青山マインドとして整理した「働く人のために働く」という行動原則のもとに、求められる会社で居続けるにはなにが必要か。持続的成長を掲げる青山商事の企業としての覚悟と夢を連載します。第一回は変革の時代の青山商事グループを牽引する、青山理代表取締役社長へのインタビューから。

2021年に中期経営計画として発表された「Aoyama Reborn 2023」。インタビューの皮切りに、青山社長はどのような意図でこれを策定したのかを伺った。

「中期経営計画ですから、伝える相手としては主に株主、投資家の皆様、そして社内を想定しているものです。<当社には、現在、3年後にはこのような課題があり、どのような施策で課題を解決していき、目指す成長目標はここです>というものを明確にしました。その進捗については毎期、そして中間と期末の決算タイミングで発表していきます」

大きな柱は3つ。「1.ビジネスウエア事業の変革と挑戦」、「2.グループ経営の推進」と続き、最後に「3.サステナブルへの取り組み」とある。

地球環境問題に社会の関心が高まっているとはいえ、サステナブルが経営の3本柱の一つとは。これほどサステナブルを重要視するのはなぜかと尋ねると、青山社長は「業界のトップを目指す企業として…」という部分に力を込めて語る。

いち早い環境課題への取り組みで求められる企業へ

「いまや社会の風潮として、サステナブルでない企業は認めてもらえなくなってきました。そんな背景は徐々に色濃くなっています。お客様も同様ですね。社会的責務を果たしていない会社のお店では買い物をしたくない、またはそういう企業は応援されないという意識になっている。投資家の方々もサステナブルに力を入れない企業には投資をしない、ステークホルダーからもなぜサステナブルをやらないのかと要求がくる時代です」

more treesの森がある高知県梼原町。「AOYAMAの森」が始動した際の写真

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そう現状を分析する青山社長だが、実際、洋服の青山はサステナビリティが叫ばれるようになる以前から、次代の「求められる会社」への活動を行ってきたことも強調する。たとえば、2010年にはオーストラリアの企業と連携し、いち早くカーボンオフセット付きスーツを販売。使用する原毛の量に応じて植樹を行うことで、スーツ生産におけるカーボンニュートラルを目指すもの。この取り組みは青山社長の言う通り極めて「早い」。音楽家・坂本龍一さんの呼びかけで2007年に発足した森林保全団体のmore treesには、2018年10月からスーツ売上金の一部等を高知県梼原町の森づくり活動に寄付を行い、その後、森林保全に関する連携協定を結んでいる。

「地域に必要とされる会社でないと将来性はないと思っています。ですから、その地域にどれだけ貢献できるか、必要とされるかというところはしっかり考えて取り組んでいます」

洋服づくりに関わる人たちからも求められるように

ポイントは、青山社長の指す「地域」が、店舗周辺のお客様が暮らす地域に限らないということだ。2010年の取り組みでいえば、青山社長がいう地域とは羊を育てているオーストラリアを指す。

清潔に管理された海外の工場の風景。労働環境への配慮も不可欠だ

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かつて商品の調達に携わっていた青山社長は、スーツづくりにおける素材の調達から流通に至るまでのすべての工程を設計する立場にあった。いまでも素材の産地でどんな人が働いていて、糸から生地へ、生地から服へ、という各工程の協力会社の存在が全て頭に入っているという。もちろん、そこで働くひとたちの顔も思い出す。それは洋服づくりがいかに裾野の広い産業であるかということを肌で知っているということを意味する。

サプライチェーンマネジメントにおいては、エシカルかつ責任ある事業慣行に関する情報共有プラットフォームSedexアンケートの登録推進にも取り組む。「今は外部20工場 のみですが、今後もっと増やしていきたい」と青山社長。すべての工程がサステナブルであること。それが青山社長のサステナブルにおけるビジョンだ。

働き方の変化により細分化されたスーツ

企業として、社会の変化に対応し、適応していく必要があるのはいうまでもない。地球環境問題のように徐々に社会が変容する事例がある一方で、新型コロナウィルス感染症の蔓延により急激に社会が変化するというケースもある。特に後者はビジネスウエアの需要に急速な変化を起こし、それは喫緊の課題として青山商事を直撃した。

「コロナ禍によって働き方はもちろん、社会の通例そのものが大きく変わりました。スーツを着て会社に行く頻度は極端に減り、結婚式は行われなくなりました。オフィシャルの場というものがものすごく少なくなったんですよね。私自身も以前は365日ネクタイを締めていましたが、5月から10月の間はネクタイなしのスタイルで、月の半分くらいはカジュアルな服装で仕事をしています。市場も相当変わりましたね」

市場は変わったかもしれないが、そこに働く人がいることは変わらない。そして青山商事が働く人の現場にコミットしていく会社であることは変わらないと青山社長は言う。

「スーツ離れなんて言われますが、仕事におけるコミュニケーションツールとしてのスーツは、やはり世界のスタンダードな洋服です。むしろスーツは働き方の変化により細分化されたのだと思います。ドレスのフォーマルスーツがあり、カジュアル化されたスーツがあり、快適なストレッチの効いた着心地の良いスーツなどがある。これらはすべて私も持っていますから 」

スーツがなくなったわけではなく、求められるスーツの有様が変わったというのが青山社長の見解だ。

「場所にあわせて、対峙する人にあわせて着るスーツを変えていくというスタイルの提案をする必要があります。わたしたちには時代に合った、お客様が求める、ビジネスパフォーマンスを上げるための衣料を提供するというパーパスがあります。それに基づいてどんどん提案をしていきます」

同時に、品目が細分化されることにより、ビジネスモデルも変えていく必要があるだろうと、青山社長は続ける。

「もはや大量生産、大量販売、大量廃棄のビジネスモデルは成立しません。だからあらためてオーダーに力を入れていこうと考えています。1着ずつお客様にあわせて作れば在庫も発生しませんし、なにより自分のために仕立てられたものを着るのは心地がいいものです。店舗もデジタル化したショールームにすることで在庫を少なくする。複合的な取り組みで廃棄するものを少なくしていこうとしています」

持続可能な業界づくりへの貢献

廃棄を減らすだけではなく、リサイクルにより環境負荷を減らす取り組みも展開してきた青山商事だが、2023年10月にスタートするWEAR SHiFTはさらに踏み込んだ施策だ。

文中の「WEAR SHiFT」の図案。根底にあるのは高度な技術と環境配慮だ

文中の「WEAR SHiFT」の図案。根底にあるのは高度な技術と環境配慮だ

「いままではウールの再生技術と規模の限界から、水平リサイクルに留まっていたリサイクルウールが、ようやく服の素材として再生できるようになり、販売できるクオリティのものを作れるようになりました。回収の環境も整い、全国の約700店舗に回収ボックスを備えたことで素材の量も確保できた。第一弾としてはコートやマフラーですが、最終的には完全なテーラードのスーツを作れるようにしていきたい」

「WEAR SHiFT」により2023年秋より展開されるコートとマフラー

「WEAR SHiFT」により2023年秋より展開されるコートとマフラー

一定以上の量の衣類を回収・再生することで、スケールメリットにより商品の価格を抑えられるというところがポイントだと青山社長は言う。

「高価なものを作ってもお客様のメリットにはなりません。コストを抑え、着心地が良く、そして買ったお客様も自然に社会貢献ができる。これらがつながるような商品を開発し、継続して取り組んでいくこと。それがトップ企業としての当社の役割だと思っています」

「Aoyama Reborn 2023」に向けてのさまざまな取り組みについて語る青山社長。
真剣でありながら、常に笑みを浮かべ明るく語る姿が印象的だった。
生家の1階は「洋服の青山」の1号店。誰よりも青山という名前に誇りをもって、この変革の時代を牽引していく。

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