「伺う」はビジネスシーンでよく使われる敬語表現ですが、「正しい使い方ができているかわからない」と悩む方もいるでしょう。「伺う」には複数の意味があるため、前後の文脈によっては意図が伝わりにくくなったり、誤解を招いたりすることがあります。
この記事では、「伺う」の意味や使い方、注意点について、例文を交えながらわかりやすく解説します。間違えやすい二重敬語の例や言い換え表現も紹介していますので、参考にしてみてください。
この記事でわかること
- 「伺う」は「行く(訪問する)」「聞く」「尋ねる(確認する)」の3つの意味を持つ謙譲語
- 「伺う」は自分の行動をへりくだって表現する言葉であり、相手の言葉に対しては使用しない
- 「伺う」をメールで使用する場合は、誤解を招かないために表現の工夫が必要
目次[表示]
敬語表現の「伺う」の意味
「伺う(うかがう)」は、謙譲語に分類される敬語表現です。話し手が自身の行動をへりくだって述べることで、相手に敬意を示す言葉です。
「伺う」には「行く(訪問する)」「聞く」「尋ねる(確認する)」という3つの意味があります。
「伺う」の使い方と例文
「伺う」の意味別に、正しい使い方と例文を見ていきましょう。
1. 行く、訪問する
「伺う」は、相手のもとへ「行く、訪れる」ということを、へりくだって表現する際に使用できます。「伺う」に「お」を付けて、「お伺いします」とする使い方も一般的です。
例文
- 明日、ご自宅に伺います。
- 本日の会議の前に、社長室へ伺う予定です。
- 明日の午後3時にお伺いしたいのですが、ご都合はいかがでしょうか。
2. 聞く
相手の話や意見を受け取る際にも「伺う」を使います。情報や知識を得る目的で、相手の発言に耳を傾ける場面で用いられます。
例文
- ◯◯さんからお名前を伺いました。
- 今回の取り組みについて概要を伺えますか?
- 説明会にて、御社のビジョンについて伺いました。
3. 尋ねる、確認する
「尋ねる・確認する」は、特定の情報や状況を明らかにするために問う行為を指します。話し手が積極的に質問し、相手から明確な回答を得たいときに使います。
例文
- ご都合のよい面談日時を伺えますと幸いです。
- プロジェクトの目的について、いくつか伺いたいことがございます。
- この件について、背景や理由を伺えますか?
「伺う」の使い方の注意点
「伺う」を使う際には、次の3つの注意点を意識しておきましょう。
相手の行動に使わない
「伺う」はあくまで自分の行動に対して使う言葉であるため、相手の行動に対して使うと敬語の誤用となります。
明日お伺いされますか。
明日お越しになりますか。
メールと口頭での「伺う」の使い方に気を付ける
メールと口頭での「伺う」の使い方に大きな違いはありませんが、注意するべきポイントは異なります。対面や電話の場合、話の文脈から自然に意味の違いが伝わりやすいですが、メールは文字だけのやり取りになるため、表現を工夫しないと誤解を招く可能性があります。
「伺う」には、「訪問する」「聞く」「尋ねる」の3つの意味があり、特に「訪問する」と「聞く」が混同されやすい点に注意が必要です。文脈によっては「お聞きする」と言い換えるほうが、意図がより明確になる場合があります。
具体例
午後2時にお伺いし、案件の進捗について伺いたいと存じます。
→午後2時にお伺いし、案件の進捗についてお聞きしたいと存じます。
「窺う」の意味と混同しない
「伺う」と同じ読み方をする「窺う(うかがう)」は、全く異なる意味を持つ言葉です。「窺う」には、隠れてこっそり様子を探るというニュアンスがあり、ビジネスシーンではあまり使用されません。
「窺う」の使用例
- 相手の顔色を窺う
- 同業他社の動向を窺う
次のような場合は「伺う」を使用するのが適切です。
明日の午前10時に御社に窺います。
明日の午前10時に御社に伺います。
部長の意見を窺うために、個人的にお話ししました。
部長の意見を伺うために、個人的にお話ししました。
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「伺う」を使う際に間違いやすい二重敬語
二重敬語とは、「尊敬語+尊敬語」、「謙譲語+謙譲語」など、同じ種類の敬語表現が重複している言葉遣いを指します。丁寧な言葉遣いを意識するあまり、無意識に二重敬語を使ってしまうことがあるので注意が必要です。
ここでは、「伺う」を使う際に間違いやすい二重敬語の例として、次の3つを紹介します。
×「お伺いさせていただきます」
「伺う」自体がすでに謙譲語であり、「させていただきます」も謙譲表現です。この2つを同時に使うと過剰な敬語となり、二重敬語とみなされます。
正しい言い換え表現
- 伺いたく存じます
- 伺います
ただし、「伺わせていただきます」はビジネスシーンで使用されることもある表現です。「伺う」(謙譲語)に「~させていただく」(尊敬語)を組み合わせることで、相手の許可や恩恵を強調する表現になります。
×「お伺いに参ります」
「伺う」と「参る」はどちらも自分の行動をへりくだる謙譲語です。同じ意味を持つ謙譲語を重ねて使用すると、二重敬語となるため注意しましょう。
正しい言い換え表現
- 伺います
- 参ります
×「お伺いされます」
「伺う」は話し手自身の行動をへりくだって表現する言葉であり、相手の行動に使うのは誤りです。また、「伺いされます」は「伺う」(謙譲語)に「されます」(尊敬語)が重なっているため、この場合は「伺う」を尊敬語に言い換える必要があります。
正しい言い換え表現
- お越しになります
- いらっしゃいます
また、「伺ってくださる」や「伺っていただく」も不適切な敬語の組み合わせですので、使用しないように注意してください。
例外!定着している二重敬語
二重敬語のなかには、習慣として広く使われ、敬語表現として定着しているものもあります。
正しい言い換え表現
- お伺いする
- お伺いいたす
- お伺い申し上げる
文化庁では、これらの二重敬語を「習慣として定着している表現」と定めています。そのため、ビジネスシーンでのメールや電話で使用しても問題ないことが多いです。
混同しやすい「伺う」と似た敬語
「伺う」と混同しやすい敬語を適切な使い分けるために、似た敬語との意味や使い方の違いを確認しておきましょう。
「伺う」と「参る」の違い
「伺う」と「参る」はどちらも謙譲語ですが、使い方と意味に違いがあります。
「伺う」は、相手に敬意を示しながら、「訪問する」「聞く」「尋ねる」といった自分の行動をへりくだって表現する際に使用します。例えば、「明日お伺いします」は、「相手のもとへ訪問する」というニュアンスが含まれます。
「参る」は、自分が「行く」「来る」という行動そのものを指す謙譲語です。「会議に参ります」のように、特に相手を意識せず、自分の移動をへりくだって述べる場合に使用します。

「伺う」は相手との関係性を重視し敬意を示す際に使用しますが、「参る」は相手を意識せず使用できる点が異なります。
「伺う」と「申し上げる」の違い
「伺う」と「申し上げる」は、どちらも自分の行動や状態について話すときに使用される言葉ですが、対象とする内容が異なります。
「伺う」は「行く(訪問する)」「聞く」「尋ねる(確認する)」といった行動に対して使います。例えば「ご意見をお伺いしたいのですが」は、「相手の意見を聞く」という行為をへりくだって表現しています。
一方、「申し上げる」は「言う」「述べる」という意味の謙譲語で、自分の言葉や伝える内容をへりくだる際に使用します。例えば「ご挨拶を申し上げます」は、自分が挨拶を述べる行為をへりくだって表現したものです。

「伺う」は自分の行動をへりくだって伝えるのに対し、「申し上げる」は自分の言葉や伝える内容をへりくだって表現します。
「伺う」と「お願いする」の違い
「伺う」と「お願いする」は、敬語としての種類と使う対象が異なります。「伺う」は、自分の行動(訪問や質問)をへりくだって表現する言葉です。例えば、「本日お伺いします」は、「訪問する」という自分の行動をへりくだって伝えています。
一方、「お願いする」は、相手に何かを依頼するときに使う丁寧な表現です。例えば、「ご確認をお願いできますでしょうか」は、「相手に確認してほしい」という依頼を敬意を込めて伝えています。

「伺う」は自分の行動を表現する際に使い、「お願いする」は相手に依頼をするときに使う言葉です。
「伺う」の言い換え表現
「伺う」の言い換え表現は、状況や文脈によって適切な敬語を選ぶ必要があります。「伺う」の意味別に、具体的な言い換え表現を見ていきましょう。
「伺う」の意味 |
言い換え表現・例文 |
行く、訪問する |
お訪ねする 【例文】 |
お邪魔する 【例文】 |
|
参る 【例文】 |
|
聞く |
承る 【例文】 |
拝聴する 【例文】 |
|
お聞きする 【例文】 |
|
尋ねる、確認する |
お尋ねする 【例文】 |
お教えいただく 【例文】 |
|
ご指示いただく 【例文】 |

伝えたいことが相手に正しく伝わるように、これらの言い換え表現も上手に活用していきましょう。
よくある質問
「お伺いしたいです」は敬語として正しいですか?
「お伺いしたいです」は正しい敬語ですが、フォーマルな場面ではややカジュアルな印象を与えることがあります。「お伺いしたいと存じます」や「伺わせていただきたいのですがいかがでしょうか」といった表現にすると、より適切で丁寧な印象を与えることができます。
「伺えますか」は敬語として正しいですか?
「伺えますか」は正しい敬語表現ではありません。「伺う」は、自分の行動をへりくだって表現する言葉です。「伺えますか」は相手の行動に対する表現となるため、「お伺いしてもよろしいでしょうか」のように、自分の行動に対して使うことが適切です。
「伺わせていただきます」は敬語として正しいですか?
「伺う」と「させていただく」はどちらも謙譲語となるため、二重敬語に該当します。この場合、「お伺いします」や「伺います」を使用するのが適切です。ただし、ビジネスシーンでは相手の許可や恩恵を強調する表現として用いられることもあります。
「伺う」の尊敬語は何ですか?
「伺う」の意味をそのまま表す尊敬語はありません。「伺う」は「行く・聞く・尋ねる」といった複数の意味があり、意味によって尊敬語が異なります。意味ごとの尊敬語は次のとおりです。
基本形 | 尊敬語 |
行く | 行かれるいらっしゃる |
聞く | お聞きになる聞かれる |
尋ねる | 尋ねるお尋ねになる |