就活では、デザイナーやエンジニア、ライター、マーケターなど、専門スキルを必要とする一部の職種において、ポートフォリオを提出するケースがあります。
ポートフォリオは、ただ作品を並べるだけではなく、自分のスキルや実績を伝えるために、レイアウトや文章表現を工夫することが大切です。
この記事では、就活におけるポートフォリオの役割や基本構成、作り方の手順などを詳しく解説します。職種ごとのポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- ポートフォリオの形式(PDF、デジタル、紙)は応募企業の指定を確認して選ぶ
- 就活のポートフォリオは、シンプルで見やすいデザイン、レイアウトを心がける
- ポートフォリオのメイン部分は作品を並べるだけでなく、説明文をしっかり書くことが大切
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就活のポートフォリオとは:自分のスキル・実績を示す資料や作品集
ポートフォリオとは、自分のスキルや実績を示すための資料や作品集のことです。就活では、クリエイティブ職や専門職に応募する際、履歴書や職務経歴書では伝えきれない実績や能力を、視覚的に示す手段として活用されます。
ポートフォリオは、単なる作品の集まりではなく、「何ができるのか」「どう考え、どんな成果を出したのか」を伝えるためのプレゼン資料ともいえます。
就活におけるポートフォリオの役割
就活におけるポートフォリオは、採用担当者に自身のスキルを知ってもらうための重要な資料です。具体的な役割としては、次の3つがあります。
- スキルの証明
- 経験や成果の可視化
- ほかの候補者との差別化
ポートフォリオは、自分の能力や得意分野を視覚的・具体的に示す「スキルの証明」としての役割を持ちます。これまでの制作物やプロジェクトの経験を載せることで、技術力・表現力を示すことが可能です。
過去のプロジェクトや取り組みをまとめて、これまでの経験や成果を伝えるためにも、ポートフォリオが役立ちます。
また、ポートフォリオは履歴書やES(エントリーシート)のように決まった形がないため、ほかの候補者と差別化しやすいことも特徴です。独自のクリエイティブなアプローチができるため、採用担当者に印象が残りやすくなるでしょう。
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エントリーシートと履歴書の違いとは?両方提出する場合のポイントも解説
エントリーシートと履歴書の違いは、伝える内容の種類や深さです。エントリーシートは、企業にアピールしたいポイントを伝える書類、履歴書は学歴や資格といった過去や現状を知ってもらうための書類です。
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ポートフォリオの提出が求められる職種
ポートフォリオの必要性は職種によって異なります。提出が求められる職種と、ポートフォリオの内容例を見てみましょう。
職種 | ポートフォリオに記載する内容例 |
---|---|
デザイナー (Web・グラフィック・UI/UX) | ・過去のデザイン作品 ・作品のコンセプト ・制作プロセス |
エンジニア・プログラマー | ・開発したアプリやサービス ・ソースコード ・開発言語や使用ツール |
ライター・編集者 | ・執筆記事やブログのリンク ・コンテンツ制作の実績 ・担当業務の範囲 |
マーケター・データアナリスト | ・施策の分析資料 ・SEOやSNSの運用実績 ・コンテンツマーケティングの成果 |
映像クリエイター・フォトグラファー | ・制作した動画や写真 ・編集スキルの説明 ・使用したカメラや機材、編集ソフト |

これらの職種に応募する場合、履歴書やESと同様に、ポートフォリオが重要な書類になります。
就活で提出するポートフォリオの構成
就活で提出するポートフォリオの基本的な構成は次のとおりです。

目次
ポートフォリオはメインとなる中身の部分が重要ですが、採用担当者が知りたい情報にすぐアクセスできるよう、目次を付ける必要があります。面接でポートフォリオを使用する際も、目次があると説明しやすくなるでしょう。
各セクションのタイトルやページ番号を記載したり、作品や実績のタイトルをリスト化したりすると見やすくなります。PDF形式の場合は、リンクをつけてジャンプできるようにすると便利です。
自己紹介
ポートフォリオには自己紹介を載せることも重要です。目次の後に自己紹介のセクションを設けて、簡単なプロフィールやこれまでの経験などを記載しましょう。
自己紹介に記載する内容の例
- 基本情報(氏名、生年月日、学校名、学部名など)
- 希望職種と志望動機
- 使用ツールやスキル
- これまでの経験や経歴
自己紹介では、自分のスキルや目指している仕事を明確に伝えます。アイコンやグラフを使用して視覚的にわかりやすくすることもおすすめです。
作品・実績一覧
作品・実績一覧は、自分のスキルを具体的に示すポートフォリオのメイン部分です。ただ作品を並べるだけでなく、作品ごとにタイトルや概要などの項目を記載することがポイントです。
作品ごとに記載する項目の例
- 作品のタイトル
- 作品(画像・URLなど)
- 概要・背景・目的
- 担当範囲
- 使用スキル・ツール
- 成果・結果
記載する項目を決めて、作品ごとに統一したフォーマットで整理すると、読みやすくなります。例えば、「PV数〇%増加」「CV率〇%向上」のように、成果や結果を数値で示せる場合は、積極的に入れることがおすすめです。

視覚的に伝わりやすくなるよう、デザインや配置にも工夫を加えると効果的です。
連絡先・Webサイト・SNS情報
最後に、ポートフォリオを見た採用担当者がすぐに連絡を取れるように、自分の連絡先やWebサイト、SNSのリンクなどを載せておきましょう。
記載する内容の例
- メールアドレス
- 電話番号
- WebサイトやポートフォリオサイトのURL(ある場合)
- 就活やビジネス用に使用しているSNS(LinkedIn、X、Instagramなど)
就活用のポートフォリオを作る手順
ここでは、ポートフォリオを作成する手順を、次の流れに沿って説明します。

1. 目的とターゲットを明確にする
ポートフォリオを作成する前に、まず「誰に向けて、どんな目的で作るのか」を明確にすることが重要です。
応募する企業や職種によって、ポートフォリオの内容は変わります。例えば、Webデザイナーならビジュアルの美しさや使いやすさが重視され、エンジニアならソースコードの質や開発プロセスを示すことが重要です。
応募する企業や職種で必要とされるスキルを調べて、それにあわせたポートフォリオを作成してみましょう。
2. 掲載する作品・実績を整理する
ポートフォリオに載せる作品や実績は、単に多く掲載すればよいわけではありません。「自分の強みが最も伝わるもの」を厳選し、整理することが重要です。
まず、自分のスキルや経験を一覧にして、どの作品やプロジェクトが最もアピールできるのかを考えましょう。それぞれの作品について次の情報を整えます。
作品ごとに記載する情報の例
- 作品のタイトル(プロジェクト名や制作物の名前)
- 画像・URL(実際の成果物を視覚的に見せる)
- 概要・背景・目的(どんな課題を解決するためのものか)
- 担当範囲(チーム内で自分がどの部分を担当したのか)
- 使用したツール(Photoshop、Python、SEO対策ツールなど)
- 成果・結果(数値で示せる場合は具体的に記載する)
これらをわかりやすく掲載することで、採用担当者は「どんなスキルを持ち、どう活かせるのか」を具体的にイメージしやすくなります。
3. ポートフォリオの形式を選ぶ
ポートフォリオには「PDF」「デジタルポートフォリオ」「紙のポートフォリオ」の3つの形式があります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、応募する企業や職種にあった形式を選ぶことが重要です。
企業によっては特定のフォーマットを指定している場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
PDFはポートフォリオで特に多く使用されている形式で、デバイスを問わずレイアウトが崩れにくいことが特徴です。
メリット・デメリット
【メリット】
- メールで送付できる
- 印刷しやすい
- 幅広いデバイスに対応している
【デメリット】
- 動画を組み込めない(URL設置は可能)
デジタルポートフォリオ
デジタルポートフォリオは、自身のWebサイトやポートフォリオサービス(Notion、GitHub Pagesなど)を利用して作成する形式です。動画やアニメーションを含めた表現にも対応できます。
メリット・デメリット
【メリット】
- 動画が入れられる
- 情報を更新しやすい
- URLを共有するだけで閲覧できる
【デメリット】
- 企業によってはリンクを開かない場合がある
(制限されている場合) - オフライン環境では閲覧できない
紙のポートフォリオ
紙のポートフォリオは、特にデザイン職などでおすすめの形式です。対面の面接の際、面接官が直接手に取って確認できるため、インパクトを与えられます。
注意点として、デジタルのみで作品を作っている場合、印刷すると画質が粗くなるなどの不具合が生じる可能性があります。
メリット・デメリット
【メリット】
- 手に取って見てもらえるので印象に残りやすい
- 印刷に関するスキルもアピールできる
【デメリット】
- 動画を組み込めない
- 物理的な持ち運びが必要になる
- ページ数が多いと全体を把握しにくい
4. デザインとレイアウトを整える
ポートフォリオは「情報を伝えるツール」であるため、内容だけでなく、シンプルで見やすいデザインにすることも大切です。
デザイン・レイアウトのポイント
- フォントを統一する(可読性の高いものを選ぶ)
- 余白を適度に取り、詰め込みすぎない
- 配色をシンプルにし、統一感を持たせる
- 見出しやアイコンを活用して情報を整理する
- 作品のビジュアルを大きく配置し、見やすくする
特に、デザイン職を目指す場合はポートフォリオ自体が「デザインスキルの証明」になるため、細部までこだわることが重要です。
5. 仕上げと最終チェックをする
ポートフォリオが完成したら、提出前に細かい部分をチェックしましょう。
最終チェックポイント
- 誤字脱字はないか
- 作品の説明がわかりやすいか
- 過去の実績やデータに間違いがないか
- ファイルサイズが大きすぎないか
- Webポートフォリオのリンクが正常に機能しているか
自分でチェックするだけでなく、友人や先輩、教授など第三者に見てもらい、フィードバックをもらうと、改善点を見つけやすくなります。
就活で作成するポートフォリオのポイント【職種別】
ここでは、就活で応募する職種別にポートフォリオ作成のポイントを解説します。
デザイナー(Web・グラフィック・UI/UXなど)
デザイン職のポートフォリオで特に意識したいのは、視覚的に魅力的であることです。単に作品を並べるのではなく、デザインの意図やプロセスを伝えることも重要です。ビジュアルが重視される職種のため、余白を適切に取り、見やすいレイアウトを心がけましょう。
掲載する内容
- プロジェクト名・制作意図
- 使用ツール(Photoshop、Illustrator、Figmaなど)
- デザインプロセス(課題→解決策→完成品)
- 作品のビジュアル(スクリーンショット、印刷物の写真など)
エンジニア・プログラマー
エンジニアやプログラマーのポートフォリオでは、技術力を具体的に示すことがポイントです。動作するプロジェクトを見せると効果的です。
掲載する内容
- 開発プロジェクトの概要(目的・ターゲット)
- 使用技術(言語・フレームワーク・ツール)
- コードの一部(工夫したポイントを説明)
- 成果や実績(アプリのDL数、ユーザー数など)
映像クリエイター・フォトグラファー
映像や写真系の職種では、作品のクオリティと制作の意図を伝えることが大切です。単に映像を並べるのではなく、コンセプトや撮影・編集のポイントを説明してみましょう。
掲載する内容
- 作品タイトル・コンセプト
- 使用機材・編集ソフト(Premiere Pro、After Effects など)
- 映像のURL(YouTube、Vimeoなど)
- 撮影・編集のポイント
就活のポートフォリオの作成に便利なツールやサービス
就活のポートフォリオを作成する際、必要に応じてツールやサービスを活用することもおすすめです。
ツール・サービス名 | 特徴 |
---|---|
MATCHBOX | ・無料で利用可能 ・株式会社マイナビワークスが運営するポートフォリオサイト ・シンプルな操作性で、初心者でもポートフォリオを簡単に作成できる |
Canva | ・無料版と有料版がある ・豊富なテンプレートと素材が利用可能(一部有料) ・ドラッグ&ドロップ操作で直感的に編集が可能 |
BRIK PORTFOLIO | ・無料で利用可能クリエイター向けのオンラインポートフォリオ作成サービス ・デザイン性の高いテンプレートが用意されている |
これらのツールやサービスを活用することで、作業効率を上げたり、見栄えのよいデザインに仕上げたりすることが可能です。また、テンプレートやレイアウトが充実しているため、デザインが苦手な学生でもクオリティの高いポートフォリオを作成することができます。

基本的には無料で使えるので、まずは試してみて、自分にとって使いやすいサービスを活用してみましょう。
ポートフォリオを作成するうえでのポイント
どの職種でも共通して、ポートフォリオを作成するうえで意識したいポイントが3つあります。
作品の羅列だけでなく解説も書く
ポートフォリオは「作品を見せるための資料」と考えがちですが、作品単体だけでは「何を考えて作ったのか」「どんな意図があるのか」が伝わりません。
採用担当者は、成果物だけでなく、あなたの思考プロセスやアプローチ方法を知りたいと考えています。そのため、作品に対する説明文をしっかり書くことが重要です。
説明文では、作品の背景や目的、自身の役割や担当範囲を明確にしましょう。その作品を作るにあたって使用したツールや、発揮したスキルを記載することも重要です。
説明文に記載する内容の例
【作品の背景・目的】
このプロジェクトは、若年層向けの〇〇アプリのUI改善を目的とし、直感的な操作性の向上を目指しました。
【自身の役割や担当範囲】
このデザインのコンセプト立案とUIパーツの作成を担当しました。
【使用したツールやスキル】
ワイヤーフレームやUIデザインの作成にはFigmaを使用し、アイコンやグラフィックの制作にはPhotoshopとIllustratorを活用しました。
ほかの人のポートフォリオも参考にする
自分だけの視点で作成すると、デザインや内容に行き詰まったり、必要な情報が押さえられなかったりすることがあります。よりよいポートフォリオを作るためには、ほかの人のポートフォリオを参考にし、デザインや構成、情報の整理方法を学びましょう。
同じ職種のポートフォリオをチェックすることも効果的です。例えば、デザイナー志望ならBehanceやDribbbleなどのデザイナー向けSNS、エンジニアならGitHubや個人ブログに公開されているポートフォリオを見て、構成やデザイン、文章の書き方を参考にしてみてみましょう。
第三者に見てもらう
ポートフォリオを作成したら、第三者に見てもらい、フィードバックをもらうことがおすすめです。自分では気づかない誤字脱字や、伝わりにくい部分、構成の不備などを指摘してもらうことで、完成度を高められます。
複数の属性の人に見てもらうと、幅広い視点からのフィードバックが得られます。例えば、業界の先輩や教授は、採用担当者の視点に近いフィードバックをもらいやすく、友人や家族であれば、専門知識がない人でもわかりやすいかを確認してもらうことが可能です。
「どこがわかりにくいか」「どの作品が最も印象に残ったか」などを具体的に聞いてみましょう。
よくある質問
ポートフォリオとは何ですか?
ポートフォリオとは、自分のスキルや実績を示す作品集のことです。特にデザイナー、エンジニア、ライター、マーケターといった職種では、履歴書やES(エントリーシート)だけでは伝えきれない能力をアピールするために活用されます。
就活のデジタルポートフォリオは何で作りますか?
就活のデジタルポートフォリオは、PDF形式またはWebポートフォリオとして作成する方法が一般的です。
PDF形式のポートフォリオはCanvaやGoogleスライドなどで作成できます。Webポートフォリオは、Notion、Wix、GitHubなどで作成でき、オンライン上で公開することも可能です。
就活のポートフォリオには何作品くらい載せるべきですか?
ポートフォリオに載せる作品数は5〜10点程度がおすすめです。多すぎると採用担当者が確認しづらく、少なすぎるとスキルが伝わりにくくなります。作品をただ並べるだけでなく、作品ごとに「制作意図」「使用ツール」「担当範囲」「成果」を明記し、自分の考えやスキルを伝える内容にしてみましょう。
就活でポートフォリオがないとき、どうすればいいですか?
ポートフォリオがない場合は、過去の課題や自主制作の作品をまとめてみましょう。インターンやアルバイトでの業務、個人プロジェクト、授業で作成したレポートやプレゼン資料も活用できます。作品が少なくても、「考え方」や「プロセス」を説明することで、採用担当者に自分のスキルや姿勢を伝えることができます。