金融業界の志望動機を書く際は、応募先企業だけでなく、業界全体の特徴や傾向を深く知り、志望動機の内容に反映させることが大切です。
金融業界にはどんな業種があるのか、志望動機の構成を紹介します。金融業界ならではの業務に就きたいという熱意が伝わる志望動機を作成し、ほかの学生と差別化を図りましょう。
この記事でわかること
- 金融業界の役割を深く知ることが重要である
- 金融業界や応募先企業のなかでもどんな業種や仕事内容に携わりたいかを明確にする
- その企業で働きたい理由を具体的にすることで意欲の高さが伝わる
志望動機を考える前に知っておきたい!金融業界のおもな業種
金融業界にはさまざまな業種があり、それぞれ特徴的なビジネスモデルや業務内容があります。志望動機を考える前に、金融業界のおもな業種を確認しておきましょう。
銀行業
銀行業は、個人や企業から預かったお金を安全に保管・管理する役割を担っています。また、個人や企業に貸付を行い、利息で収益を得る業務もあります。具体的な業務の種類は次のとおりです。
業務名 | 業務内容 |
預金業務 | ・個人や企業からお金を預かる業務 ・普通預金、定期預金、当座預金などの口座の管理を行う |
為替業務 | ・振込や送金を行う業務 ・公共料金や給料などを口座に振り込む作業を指す ・現金を動かすことなく決済できるのが特徴 |
融資業務 | ・住宅や自動車などのローンを組む業務 ・融資額に合わせて利息を付与し、利益を得ている ・返済が滞ると銀行にとって大きな損失になるため慎重に審査する |
金融商品販売業務 | ・個人の資産状況や収入に適した資産運用のアドバイスを行う ・生命保険、投資信託、損害保険などの金融商品を扱う |
銀行業の職種は、窓口業務を行う一般職と、営業や管理など銀行全体に関わる業務を行う総合職があります。
証券業
証券業とは、有価証券を売買するときの窓口となる、証券会社の業務を指します。証券会社は、株式や債券などの有価証券の売買、資産運用や資金調達支援を行います。
おもな業務は次のとおりです。
- 有価証券の売買や引受を行う
- 有価証券の売買を取引所に取り次ぐ
- 有価証券を一時的に預かり、投資家に販売する など
証券会社の収入源は、売買仲介での手数料やトレーディング(自己売買)などでの利益です。
保険業
保険業は、不慮の事故に備えたい人から保険料を受け取り、万一の際に保険料を支払う業態です。生命保険業や損害保険業、共済事業などが挙げられます。
保険業のおもな業務は、次のとおりです。
- 顧客のライフプランを確認し、最適な保険商品を紹介する
- 保険の契約に関する書類の作成
- 保険料の領収や入金処理 など
保険業界にはおもに生命保険会社・損害保険会社・保険代理店の3種類があります。それぞれ取り扱う保険の種類や業務内容が異なります。
リース業
リース業は、企業や顧客に対し、機械や設備、不動産などを長期的に貸し出すことで利益を得る業態です。顧客が希望するものを業者から購入し貸し出します。リース料に利子をつけることで、利益を得ています。
リース業のおもな業務は、次のとおりです。
- 顧客が必要とする機械や設備を販売する
- リース契約を結ぶ際、支払い能力があるか審査を行う
- 貸与商品を管理する など
資産運用業
資産運用業は、顧客から預かった株式や債券などの有価証券の運用を代行し、リターンを提供する業態です。資産運用で得られた利益は顧客のものであり、顧客からの運用委託報酬が企業の利益になります。また、運用成績に応じて手数料を徴収し、利益を得る「成功報酬型」の資産運用会社もあります。
おもな業務は、次のとおりです。
- 資産の投資判断や資金繰りの管理を行う
- 顧客に知らせる運用状況の報告書を作成する
- 資産の売買や資金流入を会計ソフトに入力する など
運用成績が重要となるため、高い専門知識と分析力が必要です。
フィンテック(金融テクノロジー)業界
フィンテック業界は、IT技術を活用して従来の金融サービスを革新する業態です。フィンテックとは、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語を指します。電子決済やクラウドファンディング、ロボアドバイザーなどが挙げられます。
フィンテック業界のおもな業務は、次のとおりです。
- 企業のサービスを知ってもらうために宣伝する
- Web広告やSNSを運用してユーザーの動向調査、分析を行い新たな戦略を企画する
- SNS上でのコミュニティの作成、運営、イベントの企画などを行う など
フィンテック業界では、顧客を確保するための営業、サービスやシステムを開発するエンジニア、サービスを使いやすく設計するデザイナーなどの職種が活躍しています。
金融業界が求める人物像
志望動機を考える際は、金融業界の企業がどんな人物像を期待しているかを把握することが重要です。企業によって期待している人物像はさまざまありますが、ここでは一般的に金融業界が求める人物像を紹介します。
分析や数値に強い人
銀行や証券、資産運用業などは、財務分析や経済動向の理解、数値に基づく判断力が必要です。統計やデータ分析を強みにしている場合は、リスク管理やマーケットの動向に対応する場面で役立つでしょう。
お金の動きは社会の動向に影響するため、日ごろから新聞やニュースで世界の経済動向を確認している人が活躍する傾向があります。
柔軟な適応力や学習意欲がある人
金融業界は経済状況やテクノロジーの変化が激しいため、臨機応変に対応できることが重要です。新しい技術や知識を積極的に取り入れ、学び続ける姿勢があると、フィンテックやデジタルトランスインフォメーションなどの分野でも活躍が期待されます。
変化に適応でき、今まで経験したことがないような業務に挑戦したり、新しいスキルを積極的に学んだりできる人は、金融業界で求められている人物像といえるでしょう。
コミュニケーション能力がある人
金融業界は、お金に関する業務であるため、顧客と信頼関係を築くことが大切です。そのため、円滑なコミュニケーションが図れる人物像が必要とされる傾向があります。
顧客のニーズを正確に把握し、適切な商品やサービスを提案するためには、相手の理解度に応じた説明力や共感力が必要です。また、社内の部署間での協力が必要な場合もあるため、わかりやすく説明する力が役立ちます。
金融業界への志望動機を書く際の構成
金融業界への志望動機を書く際は、次の手順で考えてみましょう。
1. なぜ金融業界を志望したのか
まずは「なぜ金融業界を志望したのか」の結論を簡潔に記述しましょう。応募先の企業の志望動機よりも、業界への志望動機を先に記述したほうが説得力のある志望動機になります。
結論を記述したあと、金融業界特有の意義や影響力に触れ、自身の学びや経験がどのように金融業界に関心を持たせたのか、エピソードを記述するのがおすすめです。
2. なぜその企業を志望したのか
さまざまな金融企業のなかから、その企業を選んだ理由を具体的に記述しましょう。例えば、企業の事業内容、企業理念、働き方、提供するサービスや取り組みなどの応募先企業特有の魅力を挙げるのがおすすめです。
企業研究を深め、反映させましょう。
3. 企業でどう活躍活躍したいのか
自分が入社後に、企業でどのように活躍できるかを明確に記述しましょう。金融業界の未来や企業の成長に向けて、自身が持っているスキルや資質がどのように役立つのかを具体的なエピソードを交えて記述します。具体的なエピソードを入れることで、企業が期待している人物像と自分の共通点をアピールできるため、おすすめです。
また、金融業界でキャリアを積みたいという姿勢や、具体的な目標があると採用担当者に熱意が伝わりやすいでしょう。
キャリアや具体的な目標の記述例
「資産運用のスキルを活かし、顧客満足度の向上に貢献したい」
「フィンテックの知識を活かして業務効率化を推進したい」
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金融業界の意義や役割を理解していることを示す
金融業界は経済の基盤であり、社会や企業の成長を支える重要な役割を担っています。次の例文のように、金融業界が社会にどんな影響を与えているのか、自分がどんな役割を担い、どのように活躍したいかを述べると、志望動機に深みが出ます。
金融業界の意義や役割を示す例文
「経済活動を支え、多くの人々の生活や企業の発展に貢献できる点に魅力を感じました」
特定の業種や業務に対する具体的な興味を述べる
金融業界には、銀行、証券、保険、資産運用など、さまざまな業種があるため、自分が関心を持つ分野に関わりたい理由を具体的に述べましょう。特定の業種に対し、関心を持ち、関わりたいと思った理由を具体的に述べると、志望動機に説得力が増します。
業種や業務に興味を示す例文
「資産運用業務を通じて顧客の資産形成に貢献したいと考えています」
「銀行業務における地域社会の支援に魅力を感じています」
金融業界で活かせる自分の強みを示す
次の例文のように、自分が金融業界で活躍できる理由や強みを述べましょう。
自分の強みを示す例文
「大学でデータ分析を学んだ経験を活かし、金融データをもとにした顧客ニーズ分析を行いたいと思います」
「顧客の信頼を第一に考え、誠実なコミュニケーションを心がけたいです」
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長期的なキャリアビジョンを示す
金融業界での活躍や成長意欲をアピールするために、自分が将来どのように金融業界で活躍したのかを具体的に述べます。
成長意欲をアピールする例文
「金融リテラシーを高めて、将来的には幅広い顧客層に価値あるアドバイスを提供したいです」
「市場変化に対応できる高度な分析力を持ち、業界の革新に貢献したいと考えています」
成長意欲やキャリアビジョンをアピールすると熱意が伝わりやすいため、おすすめです。
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【金融業界の業種別】志望動機の例文
金融業界の志望動機の例文を、業種別に紹介します。
銀行
志望動機の例文
金融業界に強い関心を持っている理由は、お客様の人生に寄り添い、長期的にサポートできる業界だからです。特に銀行は、地域のお客様の声を直接聞くことができ、ニーズを把握してお客様に適切なプランを紹介できるところに魅力を感じています。貴行は数ある銀行のなかでも地域イベントに多数参加されており、お客様のニーズに向き合える環境であると感じました。入行後は、お客様の信頼を第一に考え、ニーズに応えることで地域のお客様の夢と豊かさを広げていきたいと考えています。
証券会社
志望動機の例文
私は将来への経済的な不安を少しでも軽減できるサポートがしたいと考え金融業界を志望しました。なかでも、顧客の個人資産の増加をサポートできる証券会社に魅力を感じています。
貴社を志望した理由は、インターンシップに参加したときに、社員のみなさんが熱意をもってお客様一人ひとりと向き合っている姿を拝見し、私も貴社の一員として働きたいと感じたためです。入社後は、私の強みである継続力を活かして自己研鑽を重ね、金融リテラシーを高めてお客様にとって価値のあるアドバイスを提供したいと考えています。
保険会社
志望動機の例文
金融業界はお金の管理や資金の運用だけでなく、事故や自然災害などのトラブルに対する備えにおいて資金を融通し、困っている人のサポートができるところに強く関心を持ちました。特に、損害保険は自然災害や事故などが発生した際に、お客様のサポートができると感じ志望しました。
私の両親は自動車事故に遭い、入院が必要となりました。その間、仕事を休むことになり、治療費や自動車の修理費などを心配していましたが、損害保険に加入していたことで安心して治療に専念できたといっていました。この経験を通じて、私は万一の事態に備える重要性を実感しました。
貴社は、損害保険の内容が手厚く、お客様それぞれのニーズに合わせて保険内容を組み合わせて提案しているところに魅力を感じました。また、地域のイベントなどで損害保険の啓蒙活動を積極的にしており、私の経験をお客様に直接伝える機会があると感じ、貴社を志望しました。入社後は、プレゼンテーション力を生かして、多くの人に損害保険の仕組みや魅力を伝え、安心しを実感していただける仕事に就きたいと考えています。
フィンテック分野企業
志望動機の例文
私は電子決済の仕組みに強い関心を持ったことをきっかけに、フィンテック分野に携わりたいと考えています。
貴社は、電子決済のシステムに力を入れていることを知り、金融業界のデジタル化の促進に携われると考え、志望しました。
私の祖父は病気で手に痺れがあり、財布のチャックを開いたり、小銭を出したりする動作が難しいです。祖父に電子決済の使い方を教えたところ「これなら買い物がしやすい」と喜んでもらえました。
この経験から、老若男女問わず使えるような電子決済システムを開発したいと考えました。貴社に入社後は、ユーザーのニーズを調査、分析し、電子決済システムの開発に取り組んでいきたいと考えています。
よくある質問
金融業界への志望動機をES(エントリーシート)に書くときのポイントを教えてください。
志望動機は「なぜ金融業界か」「なぜその企業か」「入社後にどのように活躍したいか」を順にまとめると効果的です。具体例や実体験を織り交ぜて、志望度の高さを伝えましょう。
詳しくは「金融業界への志望動機を書く際の構成」をご確認ください。
一般的に、学生が金融業界を志望する理由は何ですか?
社会的影響力、キャリア成長、安定した収入、グローバルな環境などが挙げられます。特にフィンテックなど革新的な分野や、高い専門性に魅力を感じることが考えられるでしょう。
「なぜ金融業界なのか」と面接で聞かれたら、どう答えればいいですか?
金融業界を志望するきっかけとなったできごとや理由を具体的に伝えましょう。ポイントは自身の経験や学びと結びつけることです。
金融業界に向いている人はどんな人ですか?
論理的思考や分析力、誠実さ、コミュニケーション能力などに長けた人が向いています。また、経済の動向に興味があり、変化に柔軟に対応できる人も適性があるといえるでしょう。