業界研究とは、業界の特徴を調査することであり、就活の初期段階で欠かせない準備のひとつです。
正しい業界研究ができれば、次のステップである企業研究の材料となり、エントリーシートや面接における志望動機にも軸を見出しやすいでしょう。
そこで今回は、業界研究の目的、具体的な手段、手順を紹介します。業界研究を深める方法を理解したうえで、興味のある業界への研究をスタートしましょう。
業界研究とは業界の特徴を調査すること
業界研究とは、業界の種類や特徴を調査して理解することを指します。
具体的には、業界全体の成長度合いや将来性、業界の仕組みを調査して、自分がどのような業界・職種・企業で働きたいかを考えます。
着手時期は人により異なりますが、4年制大学の場合、3年生に進級した春ごろから、自己分析の次または同時に行う人が多いです。
上記の画像でもわかるように、業界研究は就活のなかでも早い段階からスタートしておきたい作業のひとつです。
業界研究の目的は「働きたい業界・企業を絞る」こと
業界研究の目的は、卒業後に働きたい業界や職種を絞ることです。
ただし急に働きたい企業を探すのではなく、まずは興味を抱いた業界を調べます。
業界研究を通じて社会の理解を深めることで、業界イメージの再認識をし、理想の働き方と照らし合わせながら業界や企業を絞り込むことができるからです。
業界研究の次に行う「企業研究」
業界研究との違いは、研究する対象です。「業界」と「企業」を研究する作業であり、企業研究では、実際に就職したい企業を具体的に見つけられるでしょう。
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自分が業界に対して適性があるかも見極められる
業界研究を進めていくと、業界や企業に対して理解を深めるだけでなく、自分がどの業界に向いているのか、向いていないのかも把握することができます。
働きはじめたあとに「想像とは違った」というミスマッチを防ぐためにも、興味のある業界で求められている人材の特徴や人物像と、自分のやりたいこと、できることがマッチしているのか照らし合わせましょう。
自分がその業界で働いているイメージをしながら進めてみるとマッチするかどうか見極めやすくなります。
有意義な業界情報を得るための方法
業界研究するためには、いろんな場所から情報を取得することができます。
ここでは、業界研究の具体的なやり方を紹介していますので、自分にあったものを組み合わせながらより多くの情報をキャッチしましょう。
世の中にある業界は、紹介するメディアなどにより異なりますが、大きく8つの業界に区分されており、さらに細かな業種に分かれています。
- メーカー(農林、水産、建設、機械等)
- 商社(総合商社、食品、アパレル、通販等)
- 流通、小売業(百貨店、スーパー、コンビニ等)
- 金融(銀行、証券等)
- サービス、インフラ(不動産、鉄道、航空、福祉、教育等)
- ソフトウェア、通信(インターネット、情報処理、ゲームソフト等)
- 広告、出版、マスコミ(放送、新聞、出版、広告、芸能等)
- 官公庁、公社、団体
参考:業界地図 はじめてでもよくわかる! - 就活準備 - マイナビ2023
気になる業界・業種に関連する団体や協会のWEBサイトを閲覧すると、業界全体が目指していることや、最新の事情が把握できるでしょう。
例えば「アパレル 業界団体」とGoogle検索すると、アパレル業界に関する協会WEBサイトが上位に表示されます。サイト上では、アパレル業界のトレンド、取り組みなどが閲覧できるため、業界全体がどのように動いているのかがわかるはずです。
同じ業界でも、複数の団体が存在します。さまざまな団体のWEBサイトを見て、業界の全体像を調査してみてください。
業界のトップにいる企業のサイトを見る
売上やシェアにおいて、業界内の第一線を走る企業のサイトを調べると、トップである理由や共通点が把握できます。
1社だけを研究するのではなく、売上のトップ3やトップ企業のライバル会社など、関連する企業のサイトをチェックしてみてください。異なる業界であっても、理念や目標など共通点が見つかるかもしれません。
そうすると、今まで興味を抱いていなかった業界にも目を向けられて、進路の幅も広がります。
就職情報サイトの特集やコラムを読む
マイナビやリクナビといった就職情報サイトには、学生に役立つコラムや、各業界に関するさまざまな情報が掲載されています。
- 各メディアがおすすめする業界研究のやり方
- 各業界における企業同士の関連性(業界地図)
- 業界や職種の最新情報
- 興味のある業界を0から探す方法
- OB・OGがエントリーした企業の数やランキング
業界研究に関する、さまざまな情報が掲載されています。
ほかにも自己分析の方法からグループディスカッションや面接のコツなど、幅広く就活の情報が掲載されているため、参考になります。
新聞やニュースサイトで最新の情報を得る
新聞はタイムリーなネタが掲載されており、業界の新しい情報を得るために利用できる媒体です。経済新聞のように毎日発刊されるものはもちろん、月1回発刊する特定の業界に特化した専門誌もよいでしょう。
新聞を読む機会がない人は、スマホやPCで読めるニュースサイトや新聞の電子版サイトを閲覧することもおすすめです。
ニュースサイトをただ閲覧するだけでは、業界研究や就活に活かせません。業界の動向が、業界研究でどう役立つのかを考えたり、メモしたりしながら記事を読んでみてください。
新聞や業界の専門誌は、大学内や地域にある図書館でも閲覧できるでしょう。
業界研究に特化した本を読む
業界研究に関する本には業界と職種、企業に関する情報が掲載されており、WEBで集められる情報よりも、幅広く詳細に紹介されています。
どの本を選べばよいのかわからない人は、ベストセラーの「会社四季報」業界地図がおすすめです。
業界・業種の紹介だけではなく、その年に注目されている業界や、出版した年の業界・企業の規模ランキングがあり、1冊あるだけで業界研究の進め方がスムーズになるでしょう。
例えば2021年に発売された2022年版の一部として、以下の企画が掲載されています。
- 脱炭素、GAFA、半導体、次世代自動車、キャッシュレスなど新しく注目を集めている業界の解説
- 2030年の業界の未来を予測した「2030年の天気図」
- 47都道府県のトップ企業
- 業界市場規模ランキング
- 最新の業界別年収ランキング
「会社四季報」業界地図は毎年発売されているため、就活の際にその年の最新刊を購入しましょう。まだ興味のある業界を見つけられていない人でも、業界研究に関する本を1冊読み終われば、進みたい業界が見つかるかもしれません。
業界研究セミナーに参加する
業界研究セミナーとは、その名のとおり業界研究に役立つ情報を学べるセミナーです。
大学主催や自治体主催の場合、複数の業界関係者によるセミナーとなり、あらゆる業界の情報を取得できることが特徴です。
一方企業が主催する業界研究セミナーでは、その企業が属する業界について深く詳細に把握できるでしょう。
大学主催 | ・通っている大学内で行う ・大学に関連する地元企業の担当者が登壇するケースが多い ・大学生協主催のセミナーがある |
自治体主催 | ・都道府県または市区町村主催で行う ・地元採用に積極的な企業などが登壇するケースもある |
企業主催 | ・企業が主催しており、特定の業界に興味がある人向け |
業界研究セミナーは、合同説明会と混同しがちですが、大きな違いは、学生が「何を知るか」です。
業界研究セミナー | 業界の理解 |
合同説明会 | 企業の理解 |
まずは業界研究セミナーに参加して、その後興味を抱いた企業が参加する合同説明会に足を運ぶとよいでしょう。
情報が集めきれないときはOB・OG訪問をする
WEBや新聞、本などで調査をしても、働き方、仕事の内容、業界独自の選考方法など研究しきれないこともあるでしょう。
OB・OG訪問では、実際に働いている先輩から直接話を聞けるため、ネット上にはないリアルな情報を取得できる貴重な機会になります。よくも悪くも想像とは違う現実的な話を聞けるため、自分が視野に入れている業界の向き不向きも判断しやすくなるかもしれません。
業界研究の段階でOB・OG訪問をすることになり、もしスーツの着用が望ましいと判断されるなら、就活の比較的早いタイミングでリクルートスーツが必要になるでしょう。
「どのようなスーツを選べばよいのかわからない」「先輩や企業に好印象を持たれたい」と思う人は、以下の記事でスーツの選び方を参考にしてみてください。
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業界研究をより深く行うための手順
ここからは、どのような流れで業界研究を進めていくのかを紹介します。
今は志望する業界が見つかっていなくても、作業を進めるうちに、自分の考え方に近い業界が見つかることもあります。
志望する業界が見つかっていない学生は「自己分析」をしよう
今の時点で行きたい業界がない人は、まず自己分析をしましょう。
どの業界にも興味がもてない、研究してもどの業界も変わらないと思っている人は、社会人になって活躍する自分があまりイメージできていないのかもしれません。
自己分析は、過去の自分の経験を整理して、価値観や長所、短所を再認識できるため、業界に興味がもてない人、働く自分をイメージできない人にも有効な手段です。自分の得意不得意な分野や思考から、どのような業界であれば活躍できそうか、働く意欲を高めていけそうかがわかるはずです。
すでに自己分析が完了している人は、今一度入念に自己分析をし直すとよいでしょう。
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自己分析をしても志望する業界が定まらない場合
自己分析が完了したあとも、志望する業界がはっきりと見えてこないときは、以下のことを考えてみてください。
- 絶対にやりたくないことを書き出す
- SNSやテレビ、趣味の中で面白いと感じた企業を書き出す
- 業界研究に関する本を1冊読み切ってみる
「絶対にやりたくないこと」というとネガティブに聞こえますが、嫌なことを選択肢から外すことにより、業界をある程度絞ることができます。
また、SNSやテレビで見聞きした業界や、趣味に関連した業界へと視野を広くすると、潜在的に求めていた働き方やなりたい自分が見つかる可能性もあります。
気になる業界がある学生向け!業界研究の手順
次は、気になる業界を見つけた学生向けに、業界研究を進める手順を紹介します。
手順に沿って丁寧に調査を進めていけば、業界への興味から進路の希望へと変わるでしょう。業界研究で準備するものは、ノートとペン、またはパソコンのみで問題ありません。難しく考えすぎず気軽に調査をはじめて、少しずつ深掘りしていきましょう。
1. 自分が興味のある企業をピックアップする
まずは、興味のある企業をピックアップしましょう。
その企業がどの業界であるかを確認します。ここで書き出した業界から、研究を進めてみてください。このとき、メーカーや金融といった大きなまとまりではなく「食品メーカー」「証券業界」のように業種まで考えておくとよいでしょう。
2. 業界研究の手段で情報を集めてノートにまとめる
手順1でピックアップした業界は、業界研究ノートを作ってまとめましょう。
業界研究ノートは、手書き、PCどちらでもよく、頭で整理しやすいほうを選択してみてください。
以下の項目を表にして、フォーマットを作成します。フォーマットを作成しておくと、複数の業種で同じ項目を比較できて、より自分に合う企業も見つかりやすくなるでしょう。
項目 | ポイント |
業界名 | ・メーカー ・商社 ・流通、小売業 ・金融 ・サービス、インフラ ・ソフトウェア、通信 ・広告、出版、マスコミ ・官公庁、公社、団体 業界に加えて、業種(食品、銀行)など |
業界内の トップ企業 | ・企業名は略さず正式名称 ・「食品メーカー トップ企業」と検索して、業績ランキングが掲載されたサイトから探すとよい ・No.1だけではなくNo.3まで、余裕があればTOP10までピックアップ |
市場規模 | ・「市場規模マップ」他業界との規模を把握 ・より正確な情報を入手するときは「食品メーカー 市場規模」などと検索をして、農林水産省など、国や自治体が発表する一次情報を参考 |
事業・業務内容 | ・業務の内容や部門(トップ企業の情報を閲覧するとよい) ・提供するサービス、価値 |
魅力 | ・主観的な魅力 ・他業界より魅力的に見える点 |
課題・不安な点 | ・就職したときをイメージして、どのような点に課題や不安を感じたか ・他業界より劣る点 |
平均年収 | ・「業界 平均年収」などと検索して、転職サイトを参考にする |
平均年齢 | ・平均年齢が高いと安定している、低いと若手が活躍しやすいなど、メリットデメリットを見つける |
関連する業界 | ・いくつかの業界研究をして、魅力や業務内容から見た共通点 ・関連する業界は、適性の有無も共通する可能性がある |
自由欄 | ・業界研究で気づいたことを書く |
業界研究はインターンシップの選考やエントリーシートを書く際にも使用するため、一度書いて終わりではありません。あとから見直しても意味がわかるように、細かくていねいにまとめておくことが重要です。
3. 似た業界やほかにも興味がある業界を調べる
業界研究ノートでは、さまざまな業界・業種を調べましょう。
現時点でひとつの業界しか書いていなくても、就活を進めているうちに気になった業界は、同じ手順で研究を行います。前述したフォーマットを使用すれば、業界同士の特徴が比較しやすくなります。
自分にいちばん合うと思っていた業界よりも、今まで興味がなかった業界のほうが適性があるなど、新たな発見があるかもしれません。
4. 自分が目標とする業界を把握する
- 業界のピックアップ
- 業界研究ノートの作成
- 複数の業界を調査、比較
この手順を済ませて業界研究が完了したら、そのなかから実際に働いてみたい、詳しく話を聞いてみたい業界を絞りましょう。現時点では業界研究が終わっただけの段階であるため、ひとつに絞らなくても構いません。
5. 企業研究・インターンシップに進む
業界研究の次は、基本的に企業研究へと進みます。
企業研究とは、ひとつの企業に関して深く掘り下げる作業であり、興味を抱いた業界に関する情報を収集して分析をします。
その後、気になった企業のインターンに参加するなどして、自分がどのような企業で働きたいのかをさらに追求をしていきます。
企業研究が上手く進まないときは、今一度業界研究に戻り、再度業界を把握するための作業をしてもよいでしょう。
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インターンシップとは?プログラムの探し方・募集開催期間・参加するメリットを解説
インターンシップとは職業体験を通じて、実力を確かめる・発揮する場所です。今あるスキルを確かめながら伸ばせる機会になるため、時間を確保できる方は積極的に参加しましょう。選考が実施されるインターンシップでは、書類作成や面接の練習も必要です。
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業界研究の注意点
業界研究を進めるにあたって、いくつかの注意点があります。貴重な時間を無駄にしないためにも、注意点を理解して、できるだけ効率的に進めましょう。
業界研究だけに時間をかけない
業界研究は、企業研究やインターンシップの準備、会社説明会、エントリーする企業を探すときの材料でもあります。そのため、時間をかけすぎる必要はありません。興味を抱く業界を理解し、調べたことをイメージできれば充分です。
業界研究が完了したあと、ノートを見て振り返りながら、わからないところがあれば都度深掘りしていくと、効率よく就活できるでしょう。
業界研究でまとめたことは活用しなければ意味がない
業界研究をどれだけ完璧にこなしても、次のステップで活かし切れなければ意味がありません。自己分析の結果と業界研究ノートは、就活中いつでも見返せるようにしておきましょう。
迷ったときは、キャリアセンターの担当者などに、業界研究ノートを確認してもらい、業界の認識が正しいのか判断してもらうとよいでしょう。
頼れる第三者からのアドバイスをもらうことで、業界研究の知識が活用できることに加えて、正誤の判断ができるため、前向きに就活が進めやすいです。
業界研究をする目的を忘れない
業界研究をする目的は、卒業後に働きたい業界や希望を絞るため、自分が業界に適性があるかを判断するためのものです。
業界や企業に対する情報をひたすら収集しても、知識量が選考に有利になる、内定につながるとは限りません。
ポイント
- 調査をした業界で働く未来を想像できるか
- 業界の将来性が、自分の描く未来とマッチしているか
- エントリーした企業に求められている人材か
もし業界研究の途中で目的を見失わないためにも、業界研究ノートの端などに、上記3つの項目を書いておくことをおすすめします。
まとめ
業界研究は、大学3年生に進級した春ごろから取りかかりたい作業のひとつです。自己分析の次に行われることが多く、業界に対する知識を深めながら、自分の進みたい業界を探したり、適性があるかを判断したりします。
業界研究の方法や手順はさまざまあり、絶対的な正解はありません。ただし、業界研究の目的を見失わないことや、就活の手段のひとつであることは忘れないようにしましょう。
まだ業界研究に取りかかっていない人は、興味のある業界を書き出してみるなどして、就活を次の段階へと進めていきましょう!