不易流行を大切にしつつ、 新たな未来にも挑戦。 リーダーは、 即断即決の一着で心を整える

Leader

52

Koshiro
Kudo

2025.03.28

SHITATE 60 LEADERSは、
洋服の青山60周年を記念した
オーダースーツ企画です。

Profile

旭化成株式会社
代表取締役社長 兼 社長執行役員

工藤 幸四郎

宮崎県延岡市出身。1982年に慶應義塾大学法学部を卒業し、同年に旭化成工業(現旭化成)に入社。2008年 旭化成せんいロイカ事業部長、13年 執行役員兼企画管理部長、16年 旭化成上席執行役員兼繊維事業本部企画管理部長、19年 常務執行役員兼パフォーマンスプロダクツ事業本部長、21年6月 取締役兼常務執行役員、22年4月 代表取締役社長兼社長執行役員に就任し、現在に至る。

工藤 幸四郎profile

About Work

仕事について教えてください

繊維で始まり、変革し続ける旭化成。次なる挑戦はグリーン水素

旭化成創業の地は、私の出身地である宮崎県延岡市です。実は幼稚園のころ、小児結核を患い、鼓膜が破れ、6歳のときに半年間、入院していました。病院は自宅から離れた場所だったので、親が毎日来られるわけではありません。病院のベッドから寂しい気持ちで外を眺めていると、そこには旭化成の工員たちが作業着姿で自転車に乗り、鈴なりになって出勤していく姿が見られました。高度経済成長期に入ったころで、活気のある風景に見入ったのを今でも覚えています。ただしばらくすっかり忘れていたのですが、就職活動で地元に戻ったときに、その幼いころの思い出がよみがえり、惹かれる気持ちから入社を決めました。

工藤 幸四郎インタビュー01

あれから40年がたち、私が社長に就任したのが2022年。創業から100周年を迎えた年でした。創業者の野口 遵は、もともと電気技師で水力発電所を作った人でした。発電によって得た電気でアンモニアを作ることができますが、すべるようななめらかな肌触りである、コットンから生まれる再生セルロース繊維「キュプラ」(商標名「ベンベルグ®」)、実は「ベンベルグ®」の原材料はアンモニアです。発電するたびに作られるアンモニアをどうにか有効活用できないか、世界中を調べて19世紀後半に誕生した「ベンベルグ®」という技術に目をつけて導入したのが1931年です。「ベンベルグ®」は、旭化成の創業者が水力発電から始め、当社のルーツにつながっている大切な製品の一つです。

工藤 幸四郎インタビュー02

「ベンベルグ®」紹介サイトはこちら

この「ベンベルグ®」は以前、7~8社の会社が作っていました。しかし現在残っているのは当社だけです。それには理由があります。私たちは糸を作っていますが、生地は機屋さんに織ってもらい、染めは染工場にお任せする。ただ「ベンベルグ®」の糸は扱いが非常に難しいので、委託先と一緒になって二人三脚で歩み、技術を磨き上げる必要がある素材です。高品質なものを提供してくれたら加工賃をはずみ、旭化成が定めた品質の基準をクリアして完成した生地を旭化成の名で販売する。この生産方式は旭化成が始め、のちに競合他社も追随するように同じ流れで生産するようになりました。その中で旭化成の「ベンベルグ®」が成長できたのは、いい生地を青山商事さんにお渡しする流れがあったからこそ、だと思っています。
また、会社全体の話をすると、現在は旧態依然とした素材産業のビジネスモデルからの脱却を目指しています。その中で、中期的な成長ドライバーとして、脱炭素の潮流に乗るグリーン水素という新たな事業に力を入れて取り組んでいるところです。水素社会の実現という規模の大きい挑戦ですが、新たな未来に向けて、関係する方々と協力しながら実現していきたいと思います。

工藤 幸四郎インタビュー03

About Suits

あなたにとってスーツとは?

人を輝かせる、一瞬も一生も支える大切なもの

他の人よりもスーツのことを考え、頑張っている、気にしているということはありません。ただ繊維のビジネスに長く携わったので、いろいろなアパレルメーカーさんとのお付き合いもありましたし、展示会に足を運んだりもしました。そうすると、皆さん、やはりきちんとされている。そうした姿を見ると、気分がいいですよね。それにシンプルにきちんとした格好の人は輝いて見えるじゃないですか。会う人のなかには初対面の人もいれば、2回目の人もいるし、もちろん何度も会う人もいます。でもスーツを着て、きちんとしているだけでキラッと光って見える。決まって見えるわけですから、そのほうがいい、と自然と思うようになりました。

工藤 幸四郎インタビュー04

とはいえ、夏にはネクタイをしないですし、私もスーツばかりではなく、ジャケットにパンツスタイルのことも多いです。最近、増えているカジュアルスタイルもいいのですが、自分が輝くようなスタイルを選ぶほうが個人的には好きですね。それも派手なものではなく、きちんとしているものを好んで選ぶ傾向があります。ここ6~7年はオーダーメードのスーツしか着用しなくなり、既製品のものは着なくなりました。いつもは無地の生地を選ぶことが多いですね。

Trying On

試着

工藤 幸四郎オーダースーツ試着01 工藤 幸四郎オーダースーツ試着02

About SHITATE

SHITATEの感想は?

工藤 幸四郎試着ディティール 工藤 幸四郎試着ディティール

袖を通すたび、心までフィットする

工藤 幸四郎インタビュー05

最近、ストライプが入った生地が気になるようになりまして…。今回仕立てていただいたスーツの生地はネイビーなのですが、ストライプが入ったものを選んだので出来上がりが楽しみでした。既製品を着なくなった理由は、全体のバランスがどうにもうまくとれないからです。もちろん既製品のスーツでも調整が可能ですが、身体のあるパーツに合わせたら、別のところが合わないというようなことが出てきます。身体にフィットしたものにしようとすると、細かいところを調整しないといけなくなってしまいます。それって面倒くさいじゃないですか。それなら最初からオーダーで自分の身体に合ったものを仕立てていただいたほうがよいというわけです。

工藤 幸四郎インタビュー06

今回、生地の選び方がうまくいったのか――それは定かではありません。ですが、袖を通した瞬間、フィットしている感覚が広がってきます。それに少し軽やかで気持ちがよくて、裏地の色がアクセントとして効いている。いつもは裏地も無難な色を選びがちなのですが、今回はグリーン系の色をチョイス。それがすごくキレイで気に入りました。ボタンは本水牛のものにしてもらい、2つボタン、ジャケット内側には「Kudo」の文字の刺しゅうをオーダー。細かいところについても選ぶ楽しみがあって良いと思います。

不易流行を大切にしつつ、新たな未来にも挑戦。 リーダーは、即断即決の一着で心を整える

工藤 幸四郎SHITATE着用01 工藤 幸四郎SHITATE着用02

フォーマル度 : ★★★★★

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洋服の青山の印象を教えてください

Aoyama
impression

共に変革し、未来を導くかけがえのないパートナー

コロナ禍でも店舗を増やされるなど、厳しい環境のなかでも「洋服の青山」はビジネスを拡大しておられる。さらに新たにSHITATEを全国の店舗で展開されるようになったのはすごいことですね。世の中が変わっていくと、企業も変わらなければなりません。勇気のいることですが、「洋服の青山」の姿を見ていると、100周年を迎えた当社も引き続き変革し続けていかなければならないと思います。
ただ不易流行という言葉があるように、時代が変わっても決して変わらないものがあります。私たちも「ベンベルグ®」を大切にし続けているように、時代を超えても変えてはいけないことは大切にしながら時代に合わせた変革を続け、皆さまの期待に応えられるように努めてまいります。

Material

今回チョイスした生地

Brand

鈴木貴博着用ブランド

ドーメル(フランス)

1842年、フランスにて繊維商として創業したブランド。英国の伝統と格式に、フランスのエスプリとエレガンスを融合させたコレクションは、世界中のテーラーから愛されています。

ションヘル織機で織られた柔らかさを持った風合いの素材

Schoenherr Twill

ドーメル

着用シーズン:オールシーズン
色:ネイビー
柄:カラーストライプ
素材:W100%

この生地はションヘル織機で織られたものです。ションヘル織機での製織は通常の織機の10倍以上の時間が必要です。ゆっくりと丁寧に製織しているのでウール本来のふくらみや柔らかさを持った風合いの商品です。

インタビュー:尚 貴範 採寸スタッフ:小山 史
撮影:KIMU 構成・文:松葉 紀子
CD:ジャン 光栄

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