130年の伝統を超えて、 未来を紡ぐ。 匠が選ぶ、至高のウールで 仕立てたスーツ

Leader

47

Yutaka
Nagaoka

2025.02.19

SHITATE 60 LEADERSは、
洋服の青山60周年を記念した
オーダースーツ企画です。

Profile

日本毛織株式会社
代表取締役社長

長岡 豊

大阪府出身。岐阜大工卒。1984年日本毛織株式会社に入社。岐阜工場長、印南(いんなみ)工場長などを経て、20年から取締役常務執行役員。22年に代表取締役社長、社長執行役員に就任し、現在に至る。130周年に向けて、第3次中期経営計画の初年度である2024年度は、ニッケと62のグループ会社がそれぞれの強みを発揮し、補完し合うことで、売上高は4期連続増収、 営業利益は3期連続で過去最高値を更新し、親会社株主に帰属する当期純利益も過去最高値を更新するなど、高い実績を残している。

長岡 豊profile

About Work

仕事について教えてください

長岡 豊インタビュー01

事業が拡大しても、根底にあるのはモノづくりに対する真摯なこだわり

私ども日本毛織株式会社(通称ニッケ)は1896年に創業しました。私は2022年に代表に就任し、現在は「RN(リニューアル・ニッケ)130ビジョン」の第3次中期経営計画に沿って事業を進めているところです。おかげさまで2024年度はニッケと62のグループ会社がそれぞれの強みを発揮し補完し合うことで、過去最高の営業利益・当期純利益を計上させていただきました。

長岡 豊インタビュー02

現在、ニッケグループには4つの事業があります。創業の原点となっている「衣料繊維事業」をはじめ、「産業機材事業」「人とみらい開発事業」「生活流通事業」など事業領域は多岐にわたります。「衣料繊維事業」では、学校やビジネスシーンにおけるユニフォームや洋服の生地などを作っています。「産業機材事業」では、自動車・環境用途の不織布フィルターやフェルトを作っているほか、ファクトリーオートメーションやテニスラケットのガットなども手がけています。

長岡 豊インタビュー03

「人とみらい開発事業」では、工場の跡地の有効活用をしようと、ニッケコルトンプラザ・ニッケパークタウンの商業施設の運営や不動産開発、賃貸、保育、介護なども行っています。
「生活流通事業」では、生活家電や雑貨、家具などをECサイトで販売したり、スタンプ用のインクを製造したりしています。経済不況や戦争などの影響で波乱万丈な時代もありましたが、それらを乗り越えて今の形になりました。
今後さらなる躍進を目指して、私は「商品開発、合理化・省エネ設備への投資」「顧客拡大のための投資」」「人財投資」の3つを重点的に行うと宣言しています。

長岡 豊インタビュー04

日本毛織は、繊維事業から始まった会社です。繊維のビジネスというのは地味で、私自身、入社以来、35年間、工場で勤め、モノづくりに突き進んできました。当社の代表的な製品であるウールは、天然素材です。化学繊維と違って丁寧に向き合わないと、高品質のものは作れません。化学繊維は太さや長さが均一ですが、ウールにはばらつきがあります。

長岡 豊インタビュー05

それにまず、羊毛をカットしたときには、土砂・油分や植物がついていて茶色です。それらを洗浄し、キレイにしたうえで綿菓子状にしたあと、重ねて束にし、引き伸ばしながら糸を作っていくのですが、この作業だけでもかなり手間がかかります。染色も一筋縄ではいきません。一度、染めてしまうと前の色には戻りません。そのため、少しずつ染めては状態を確認する作業を繰り返すことで、色相を合わせながら均一で深みのある色合いに仕上げていきます。

長岡 豊インタビュー06

このような作業を根気強く積み重ねてきた会社のためか、誠実で真面目に仕事に取り組む人が多いですね。そうした繊維事業で培われた企業風土があるので、他の事業でも丁寧に向き合う姿勢は息づいています。そのおかげでここまで成長してこられたのだと思います。

About Suits

あなたにとってスーツとは?

長岡 豊インタビュー07

人生の節目で活きるもの

私自身、工場で勤めていた35年間は作業服で過ごしてきました。毎日、油まみれになって仕事をしていたのを覚えています。もちろん、本社に行くときにはスーツを着る機会もありましたが、正直、スーツはまだ着慣れていないですね。ただスーツは、人生の節目には欠かせないものではないかと思っています。例えば、入社式や結婚式のようなフォーマルなシーンで活きてくるものではないでしょうか。

長岡 豊インタビュー08

私の場合、スーツの勝負カラーはネイビーです。実は日本毛織では、紺色といっても2000色のバリエーションがあります。羊毛も刈り取ったときには土の色に近い赤っぽい色であったり、ほかにも黄色や白など、その年によって違いますし、産地によっても違います。そうしたさまざまな色の羊毛をキレイに糸にして、紫っぽい紺、濃い黒に近いような紺など、いろいろなものをミックスして作り上げた紺色の糸の深みは一味違います。深みがあるだけでなく、製造の難しさがわかっているので、紺色が好きなのです。個人的にはウール以上のスーツはないと思うくらい、ウールにこだわりがあります。

Trying On

試着

長岡 豊オーダースーツ試着01 長岡 豊オーダースーツ試着02

About SHITATE

SHITATEの感想は?

長岡 豊試着ディティール 長岡 豊試着ディティール

着ていても軽やかで暖かい。理想的な仕上がり

長岡 豊インタビュー09

今回仕立てていただくときには、着ていて軽く暖かいものがほしかったんです。実は私は、上背があるので既製のスーツであまり合うものがなく困ることも。ですからSHITATEでスーツを作るのは楽しみでしたね。細いストライプのスーツがほしくて、今回、この生地を選ばせていただきました。本当にしなやかで着心地がいい。それに色も落ち着いた感じで気に入りました。

長岡 豊インタビュー10

ちなみに日本毛織が製造する、ニュージーランド産の極細ウールを使った生地には独特のぬめり感と光沢があります。ウールは化学繊維では決してできない自然なばらつきがあります。ウール繊維1本1本にある縮れをクリンプと呼ぶのですが、クリンプや長さ・太さのばらつきが生地のぬめり感や光沢に関係しているところが面白いのです。そういう意味ではウールは天からの授かりものではないかと思っています。

長岡 豊インタビュー11

繊維を束にして、何度も引き伸ばしながら紡いで糸に仕上げていくのですが、ウールの繊維は平均で約35本になるように作っていきます。ばらつきを抑えるのは製造技術にかかっているのですが、根気強く取り組まなければ、いい製品は作れません。私はニッケに入って40年になりますが、羊から刈り取った大切な毛をどうすれば高品質なものになるのか、これまで研究や設備開発などを通じて試行錯誤してきました。これからも「洋服の青山」と共にお客様に求められる丁寧なモノづくりを心掛けて取り組んでいきたいです。

長岡 豊インタビュー12

130年の伝統を超えて、未来を紡ぐ。 匠が選ぶ、至高のウールで仕立てたスーツ

長岡 豊SHITATE着用01 長岡 豊SHITATE着用02

フォーマル度 : ★★★★★

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洋服の青山の印象を教えてください

Aoyama
impression

意思疎通をしながら、モノづくりに取り組める大切なパートナー

「洋服の青山」が手がける、フォーマルスーツの最高峰である「匠ブラックフォーマル」には、当社の最高級素材「MAF」を採用していただきました。これまでも日本毛織が製造する高品質なウールや織物を「洋服の青山」のスーツの生地として使用していただいております。そうしたことから、私どもは「洋服の青山」を常に意思疎通を図りながら、ともに開発を進める大切なパートナーだと認識しています。私自身、技術畑でずっとキャリアを積んできましたから、自社の製品には自信があります。今回、改めて当社のウールを使って仕立てていただいたスーツを着られてすごくうれしいですね。

Material

今回チョイスした生地

ハリの風合いと、着用快適性を兼ね備えたハイブリッド素材

NIKKE Feel Merino ZQ Tropical

長岡 豊生地

ブランド:日本毛織
着用シーズン:春夏
色:ネイビー
柄:ピンストライプ
素材:W100%

Nikke Feel Merinoのものづくりは、羊毛生産農家との直接相対契約を行うZQを起点に、完全にサスティナブルかつトレーサブルなサプライネットワークを構築します。素材特徴としては、追撚糸を使用し、特殊な洗いや仕上げ工程を施す事で、柔らかいのに適度なハリの風合いと、着用快適性を兼ね備えたハイブリッド素材です。

インタビュー:尚 貴範 採寸スタッフ:大谷 泰毅
撮影:KIMU 構成・文:松葉 紀子
CD:ジャン 光栄

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