漆器の未来を、次の100年へ 伝統を現代へと伝える人の 漆をプラスした洗練された装い

Leader

38

Kenta
Yamada

2024.12.06

SHITATE 60 LEADERSは、
洋服の青山60周年を記念した
オーダースーツ企画です。

Profile

漆器 山田平安堂
代表取締役

山田 健太

1995年に慶応義塾大学法学部を卒業後、三井住友銀行へ入行。1997年に退行し、山田平安堂の代表取締役に就任。自社工房で職人の技術を活かす事業を行う製造子会社「続々庵」を設立し、生産から販売までの一貫体制を構築。代官山本店のほか、GINZA SIX店や大丸心斎橋店の直営店がある。2006年には成田空港に新事業体として、和工芸品のセレクトショップ「天正堂」を開店。2014年、六本木に、漆のある空間として「Heiando Bar」をオープン。

山田 健太 profile

About Work

仕事について教えてください

山田 健太 インタビュー01

新たなマーケットを開拓する宮内庁御用達の漆器店

私で四代目になる山田平安堂は、1919年に創業し、漆器専門の小売店として100年以上の歴史があります。宮内庁御用達の栄誉を賜り、先人たちの技術や伝統を大切にしながら、現代のライフスタイルにマッチした漆器の魅力を提案しています。

山田 健太 インタビュー02 山田 健太 インタビュー03

一般的に漆器は産地名を冠して販売されることが多いですが、当店では単なる仕入れ販売にとどまらず、現代の食卓にふさわしい漆器を創り出すため、企画から製造、販売までを自社工房で一貫して行っています。
漆器は伝統工芸品として、飾り物のような存在で、一部の人々にしか使われていないという印象が強いかもしれません。実際、100年前と比べると漆の市場規模はおよそ千分の一に縮小しています。けれど、それは漆の美しさが失われたわけではなく、ライフスタイルの変化に応じた漆器を提案できていない漆器店の責任だと考えています。
山田平安堂では、現代の生活に寄り添ったオリジナリティあふれる漆器を生み出すことで、消費者に受け入れられ、収益を上げてきたことがその証明だと思っています。

山田 健太 インタビュー04

私が常に考え続けてきたのは、漆塗りと蒔絵を新しいマーケットで広げていくことです。美しい漆塗りや蒔絵を「身につける」という新たなステージで表現したいという思いから、万年筆やカフス、タイピンの商品化を進めてきましたが、特に腕時計の文字盤に蒔絵を描くことが私たちの夢のひとつでした。
そんな折、世界的なジュエリーブランド「ショパール」の日本法人の方が平安堂の漆器のファンであることがきっかけとなり、この夢が実現することになりました。最初は日本限定モデルからスタートし、翌年にはアジア展開を果たし、最終的には全世界でオーダーが可能なグローバルモデルとして採用されました。
15年が経った現在、毎年干支をテーマに新作を発売し、世界中で好評を得ています。ショパールの社長が来日した際には、福井にある工房を訪れ、職人たちにお礼を言ってくださるなど、非常に良い関係を築くことができました。この成功例は、グローバルな視野で高い評価をいただけたことを示しており、漆塗りと蒔絵を身につけるという新たなマーケットの可能性を確信する大きな一歩となりました。
※蒔絵:漆の上に金粉や銀粉を蒔きつけて装飾を施す技法

山田 健太 インタビュー05

その他にも、「GODIVA」のショコラボックスの制作や、サミットで日本政府から各国首脳に贈られた洋菓子ギフトの重箱制作、映画「シン・ウルトラマン」の美術協力など、さまざまな取り組みを行ってきました。漆塗りを伝統工芸という枠だけで捉えると、世界が狭くなりますが、要するに“付加価値を高める塗装”なのです。付加価値を高める仕事と考えれば、どんな業種ともコラボレーションが可能です。職人が手掛けた蒔絵は同じものがふたつとないため、付加価値だけでなく特別感も高めることができます。実際に、異業種とのコラボレーションは増加しています。

山田 健太 インタビュー06

三代目の亡父から26歳で当主を引き継ぎ、この25年間、さまざまな活動に取り組んできました。困難な道のりの中でも経営を立て直し、会社を大きくできたのは、漆器の美しさとその可能性があってこそだと考えています。漆器山田平安堂は、伝統と現代をつなぐ架け橋として、より多くの人々にその魅力をこの先100年後にも伝えていくことを使命とし、これからも尽力していきたいと思います。

About Suits

あなたにとってスーツとは?

山田 健太 インタビュー07

一期一会の会話が生まれる、漆をプラスしたスーツ

正直に言うと、僕はファッションに疎く、これまであまりお金をかけてきませんでした。しかし、年齢を重ねるにつれて、会食や所属する会合で司会や講演をする機会が増え、フォーマルな場が多くなったため、スーツの重要性を実感しています。スーツを購入する際は、お店のスタッフのアドバイスに従うことがほとんどです。プロの意見は貴重で、自分のセンスよりも「餅は餅屋」という考え方を大切にしています。その結果、周囲から褒められることが多く、本当に感謝しています。
漆器に関しても同様です。自分の目で選ぶ方もいれば、僕たちに託される方もいます。その際は、全力で考え、期待に応えたいと思っています。

山田 健太 インタビュー08

ひとつ、ファッションにおいて僕なりにこだわっていることは、漆器の代表的なカラーである赤・黒・金を取り入れることです。例えば、カジュアルなスタイルの時には赤いシューズをよく履き、スーツを着用する際には、胸ポケットに挿すペンやカフスなども、漆や蒔絵のアイテムを身に着けています。なぜなら、会う人との会話の切り口になるからです。これは、ファッション業界の方々には真似できない、漆器店だからこそできる贅沢かもしれませんね。

Trying On

試着

山田 健太 オーダースーツ試着01 山田 健太 オーダースーツ試着02

About SHITATE

SHITATEの感想は?

山田 健太 試着ディティール 山田 健太 試着ディティール

プロに託したからこそ、自分のイメージを超えた最高の仕上がり

山田 健太 インタビュー09

今回、SHITATEでプロのスタッフにすべて選んでいただきました。似合いそうな色を提案してもらい、自分では選ばないような生地で仕立ててもらいました。ベージュ系のスーツは初めてですが、とても楽しみな気持ちと同時に、自分の姿をイメージできずにいました。しかし、鏡を見た瞬間、「すごく良い!!」と声が出るほどの嬉しい驚きがありました。これまでグレーのスーツが多かったため、自分では絶対に選ばない冒険色でしたが、やはりプロの選択は素晴らしいですね。サイズもぴったりで、着心地も抜群。最高の仕上がりです。

山田 健太 インタビュー10

裏地にはお気に入りの赤色を選びましたが、これもベージュと絶妙にマッチしていて非常に満足しています。ネームには「63」と刺繍してもらいました。これは学生時代にアメリカンフットボールをしていた時の背番号であり、妻の誕生日でもある特別なナンバーです。
今日は、ショパールとコラボした中で特にお気に入りの「金魚蒔絵」の文字盤時計を着用しています。これからさまざまなシーンで、SHITATEのスーツと漆・蒔絵アイテムを組み合わせたコーディネートを楽しみたいと思います。

山田 健太 インタビュー11 山田 健太 インタビュー12

漆器の未来を、次の100年へ
伝統を現代へと伝える人の
漆をプラスした洗練された装い

山田 健太 SHITATE着用01 山田 健太 SHITATE着用02

フォーマル度 : ★★★☆☆

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洋服の青山の印象を教えてください

Aoyama
impression

プロならではの提案で、期待に全力で応えてくれました

僕のファッション選びはプロにお任せし、そのアドバイスに従ってコーディネートしています。「洋服の青山」のスタッフの方々は、その期待に全力で応えてくれ、最高の仕上がりのスーツを手に入れることができました。
高品質なオリジナルスーツには、漆や蒔絵を施したボタンをコーディネートする提案もできたら…そんなアイデアも生まれ、とても楽しいSHITATE体験でしたね。

Material

今回チョイスした生地

SUPER 130’Sのしなやかでソフトな手触り

Super130's Tropical

山田 健太 生地

ブランド:E・THOMAS
着用シーズン:春夏
色:ベージュ
柄:無地
素材:W100%

盛夏に最適な極上のウールSUPER 130’S を使用し、平織のトロピカル素材を別注色として展開しました。ライトウエイトで、さらにSUPER 130’Sのしなやかでソフトな手触りが既製やカスタムオーダーの製品に生かされ、着心地の大変良いものとなると信じております。

インタビュー:小野 一樹
撮影:KIMU 構成・文:大塚 綾
CD:ジャン 光栄

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