未利用資源に新たな命を 吹き込むリーダー。 次世代へつなぐ サステナブルスタイル

Leader

31

Etsuko
Uda

2024.09.18

SHITATE 60 LEADERSは、
洋服の青山60周年を記念した
オーダースーツ企画です。

Profile

株式会社フードリボン
代表取締役社長

宇田 悦子

2015年、3人目の出産を機に、11年間勤めた大手美容企業を退職。その後、企画・サービス業を個人事業主としてスタート。2017年、沖縄でのシークヮーサーのプロジェクトをきっかけに、フードリボンを設立し、代表取締役に就任した。2019年よりパイナップルの葉の活用事業を手がける。21年5月にパイナップルの葉から作られたストローを発売開始し、同年7月に銀座・和光にて衣類が発売される。23年には「青年版国民栄誉賞(JCI JAPAN TOYP)2023」(日本青年会議所主催)で経済産業大臣奨励賞を受賞するなど活躍の場を広げている。

About Work

仕事について教えてください

未利用資源が生まれ変わることで、持続可能な社会を目指す

フードリボン、という社名は今まで価値がないとされていた未利用農業資源を生まれ変わらせる(REBORN)と、生産者から消費者までつなぐ縁=リボンとなる活動が由来となっています。「1着を長く大切に着る」、「捨てるものがない明日」をコンセプトに掲げ、現在はパイナップルなどの今まで捨てられていた葉から独自技術で天然繊維を抽出。生産者に還元できる仕組みを構築していて、少しずつ積み重ねが形になってきているところです。

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前職では、人に喜んでいただけることがしたい、人見知りの性格を直したいという想いから、接客業を選びました。仕事を始めて7年目、一人目の子どもが1歳になったころに東日本大震災があり、食べるものに対して意識が高くなりました。美容の仕事でもお客様が肌に直接つけるものや健康食品を販売していたため、原材料や添加物などについて説明する機会が多く、原材料に対しての興味が高まったのは自然な流れでした。三人目の子どもの出産を機に退職し、その後独立したときに友人の紹介で「仕事を手伝わないか?」ときっかけをいただいたのが農産物の残渣の粉末化を行う会社の業務でした。例えば、北海道でとれる昆布は海から陸にあげられる時点で3分の1はカットされてしまいます。根元より下の部分は硬くそのまま売ることができないため、市場に出せないと見なされ捨てられてしまうけれど、そこに栄養がたくさん含まれているというようなことがあり、そうしたところを活用するという様々な取り組みに個人事業主として関わるうちに、やがて出会ったのがシークヮーサーでした。

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沖縄の大宜味村(おおぎみそん)はシークヮーサーの日本一の産地で、県内60%の生産を誇っています。そのうち、9割ほどが果汁として出荷されるのですが、搾りかすについてはこれまでほとんどが廃棄されていました。重量としては果実の半分ほどになり、1年で約1600トンの果皮が捨てられていたのです。前職での経験から果皮はアロマや化粧水やサプリメントにも使えるというのを知っていました。初めて大宜味村で産業祭りに出展した日に、ある一人のおばあとの出会いがありました。暮らしの中で果皮を活用しているというおばあの経験や知恵から色々学ばせていただくうちに、「あなたは何のために仕事をしているの?」と聞かれたことがあり、とっさに「大宜味村のため」と言葉が出たのですが、言った瞬間にまだ何もできていないのに自分が偉そうなことをいってしまったと気づき赤面してしまいました。その後、本気で何のために仕事をするのかと自分と向き合うようになりました。そしてある日、おばあから『かふうあらしみそーれ、とぅくとぅみそーれ(あなたに幸せが訪れますように、徳を積む善い行いをしようね)』という言葉を教えてもらいました。自分のことだけでなく、子どもや孫の世代の幸せを願い、行動することで、自分に幸せが還ってくるということを、この言葉や大宜味村での経験で教えてもらったと思っています。自分自身の足りないところに気づくことができたことに感謝し、仕事も、自分の人生にも指針としていきたいと心から思っています。

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About Suits

あなたにとってスーツとは?

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スーツの原材料としてパイナップルの葉のポテンシャルに期待

かっちりとしたものはあまり好みませんが、仕事ではスーツをよく着用しますし、海外出張のときにもジャケットを必ず持参するようにしています。式典や政府との契約など、重要なシーンにスーツは欠かせません。

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今はパイナップルの葉から繊維を取り出し、糸や生地にする事業を進めているので、パイナップルの葉がスーツの生地や葉の残渣がボタンなどの原材料になるのではないかと、可能性に大きな期待を寄せています。近年、安価な洋服の生産に伴う児童労働や労働搾取、環境問題がメディアで取り上げられ、生産背景について関心が高まっています。私たちが進めているパイナップル繊維の活用が、その課題を解決できる素材になると確信しています。また、誰がどのように作った素材であるかを明確にし、そのような透明性のある素材を使ったスーツが、ビジネスのシーンで当たり前に選ばれる社会を目指して働きかけていきます。現在、インドネシアでは国立農業組織や地元の大学との連携をし、まずは2500ヘクタールの広大なパイナップル生産地を対象に、地域政府の協力のもと事業を開始するところまでようやくたどり着きました。インドネシア国内では農家さんの貧困という課題があります。私たちの取り組みは農家さんの所得向上に直結し、地域経済と社会課題を解決できることを目指しています。同じく課題を抱えるアジア各地に取り組みを拡げ、欧米市場においても、単なる素材としてだけでなく、私たちの取り組みに共感し、支持を得られるように活動していきます。

Trying On

試着

宇田 悦子 オーダースーツ試着01 宇田 悦子 オーダースーツ試着02

About SHITATE

SHITATEの感想は?

宇田 悦子 試着ディティール 宇田 悦子 試着ディティール

流行り廃れのない生地をチョイス。長く着られるものに

宇田 悦子 インタビュー12

これまでオーダースーツを作った経験はなく、敷居が高いと感じつつも、長年の憧れでした。今回ついに挑戦することができました。昔、6年間水泳をしていたため肩幅が広く、腕周りがフィットするか心配でしたが、着てみると腕周りも問題なく、非常に快適でした。着心地も素晴らしく、仕立てて本当に良かったと感じています。
今回選んだ生地は、流行に左右されない落ち着いたワントーンカラーです。できるだけ長く着られるものを選びたかったので、このような選択をしました。SHITATEの生地にも、ぜひパイナップルの葉から作られた繊維を採用していただき、資源を循環的に使う新しい提案を広めていただけると嬉しいです

宇田 悦子 インタビュー13

廃棄素材に新たな命を吹き込むリーダー。 次世代へつなぐサステナブルスタイル

宇田 悦子 SHITATE着用01

フォーマル度 : ★★★☆☆

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洋服の青山の印象を教えてください

Aoyama
impression

知名度も高くて、どこにでもある、身近な存在

これまで何度か利用させていただいたことがあります。沖縄に住んでいたときにも「洋服の青山」の店舗が近くにあり、常に身近な存在ですね。知名度も高いので、スーツといえば、「洋服の青山」というイメージがあります。それだけ影響力がある会社だと思いますので、廃棄されていた資源を大切に使う取り組みを伝えていただき、社会を変える選択肢を選べるようにサポートしていただけるとうれしいです。一度、皆さんに沖縄に来ていただき、パイナップルの畑から繊維を作られること、役目を終えた後にも再利用の方法があり、最終的には土に還り土壌をよくしていく技術があるということをお伝えしたいですね。

インタビュー:尚 貴範
撮影:KIMU 構成・文:松葉 紀子
CD:ジャン 光栄

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