スーツに使われる生地の種類は?生地ごとの特徴や選び方のポイントまで解説

2023.04.20

ビジネス

スーツに使われる生地の種類は?生地ごとの特徴や選び方のポイントまで解説

この記事の所要時間:約11分

スーツを選ぶ際にシルエットや色にこだわる方は多いと思いますが、生地選びも重要なポイントであり、個性を発揮できる要素の一つです。

そこで今回は、生地選びに必要な知識を詳しく解説します。

1. スーツ選びの生地の重要性

スーツ選びの生地の重要性

スーツを選ぶ際、みなさんは生地にこだわっているでしょうか。

実は、生地こそがスーツ選びの肝といっても過言ではありません。

ツヤがあればフォーマルな印象に、チェックであればカジュアルな印象に、ストライプであればスマートな印象に……など、生地一つで全体の印象をコントロールすることもできるのです。

また、ストレッチ性能のある生地やシワが付きにくい生地など、機能性の高い生地は毎日の快適さを左右します。

このように、生地選びはとても重要なものです。しっかりとした知識を持って生地を選べば、より快適に、かつおしゃれにスーツを着こなせるようになります。

2. スーツに使われる生地の種類

スーツの生地は国によっても特徴が分かれますが、ここでは代表的な生地ブランドと特徴を解説します。

2-1. イタリア生地

イタリアの生地の特徴は、柔らかく軽やかなことです。

雨が少なく温暖な気候なため、硬くて重厚な生地よりも柔らかな生地が好まれてきた背景があります。

イタリアの代表的な生地メーカーは下記のとおりです。

Ermenegildo Zegna(エルメネジルド ゼニア)

エルメネジルド ゼニア

1910年に北イタリアで創業したテキスタイルメーカーです。
オーストラリアから買い付ける最高品質の素材がゼニアの生地の特徴であるソフトで繊細な触り心地を生み出します。
アルマーニやエルメス、トムフォードなどのハイブランドでもゼニアの生地が採用されており、高品質な生地の代名詞的な存在です。

Loro Piana(ロロ・ピアーナ)

ロロ・ピアーナ

1924年に創業したテキスタイルメーカーです。
海外のハイブランドや日本の高級デザイナーズブランドもロロ・ピアーナの生地を採用しています。
高品質カシミヤや高品質ウールを得意としており、繊細で滑らかな風合いのウールはまさにスーツに適した素材といえるでしょう。

LUIGI COLOMBO(ルイジ・コロンボ)

ルイジ・コロンボ

カシミヤやキャメルなど天然繊維を得意とするテキスタイルメーカーです。
高品質の素材でありながら、独自の仕入れルートを持つことで、コストパフォーマンスに優れています。
上品なツヤを持つしっとりとした肌触りの生地はオートクチュールや多くの有名ブランドに愛用されています。

GUABELLO(グアベロ)

グアベロ

イタリアでも特に長い歴史を持つテキスタイルメーカーです。
1815年に北イタリアで創業されました。肌触りがよく高級感あふれる細番手の生地が有名です。

Vitale Barberis Canonico(ヴィターレ・バルベリス・カノニコ)

ヴィターレ・バルベリス・カノニコ

良質原毛での紡績、機織、染色まで一貫して自社工場で行っています。
輸出先は世界40カ国以上。
軽く滑らかな肌触りで光沢があり、発色の良さが特徴です。

REDA(レダ)

レダ

1865年創業。
自社の「ニューイングランド・ウール社」で原毛の飼育から選別し、紡績、生地の生産まで自社で一貫して管理するメーカーです。
高品質で、その美しさと機能性で人気があります。

2-2. イギリス生地

イギリスは「一日のなかに四季がある」と言われるほど天候が変わりやすく、年間の平均気温が日本より低い地域でもあります。

そのため、スーツの生地は厚くハリがあり、耐久性が高いと評価されます。

JOHN CAVENDISH(ジョン・キャベンディッシュ)

ジョン・キャベンディッシュ

1988年に創業されたイギリスの名門テキスタイルメーカーです。
イギリスの生地ならではのハリ・コシのある生地を得意としており、世界中のテーラーやラグジュアリーブランドで採用されています。

JOHN FOSTER(ジョン・フォスター)

1819年にイギリスのウェストヨークシャー州で創業した老舗テキスタイルメーカーです。
高品質なモヘヤ生地や細番手の生地を得意としています。
イタリアの生地よりはハリがありイギリス生地よりは柔らかい、両国の生地の特徴を併せ持った風合いです。

2-3. フランス生地

フランスの生地メーカーといって真っ先に名前が挙がるのがドーメルです。

1842年にイギリスの生地をフランスで販売したことにあります。

国内で生産せず、イギリスとイタリア素材を使い分けています。

DORMEUIL(ドーメル)

ドーメル

しっかりとしたハリがあり、光沢感あふれるイギリス仕込みの風合いが特徴です。
事業規模を広げ過ぎず徹底して品質管理された生地は、フランスのメゾンブランドや世界中のハイブランドに支持されています。

2-4. 日本生地

高温多湿な気候に対応した機能性あふれる日本の生地。

世界のブランドも一目置く良質なものが揃っています。
 

御幸毛織

御幸毛織

御幸毛織は1905年の創業以来、生地の品質を追求してきました。
糸の品質により織機を変える、自然な風合いを作るために天然石鹸を使うなど、日本の職人の技術が詰まっています。
細かな工程管理により生産された生地には独特のぬめりや光沢感があります。

日本毛織

1896年に創業したニッケの歴史はウールを使った生地作りから始まりました。
ニュージーランド産の極細ウール使った生地には独特のぬめり感と光沢があります。
気品に満ちた風合いはカシミヤにも勝ると評価されています。

3. 名称別に生地の特徴を紹介

メーカーだけでなく生地の特徴を知ることで、スーツ選びはより楽しくなります。
代表的な生地の特徴をご紹介します。

3-1. ツイル

スーツに使用されるウール生地の織り方は「平織(ひらおり)」と「綾織(あやおり)」が一般的ですが、ツイルとは「綾織」の生地のことです。

綾織は、生地に畝(うね)のような凹凸があることが特徴です。糸の密度が高いため、厚く丈夫な生地になります。

一方、平織は最も基本となる生地の織り方です。
通気性がよいので夏場のスーツに使われることが多い生地で、経糸と緯糸が交互に1回ずつ交互に編まれているため耐久性が高く、摩擦に強い生地になります。

しかし、そのぶん伸縮性は高くありません。

平織
平織
綾織
綾織

3-2. シャークスキン

その名のとおりサメの肌のような模様が出る織り方です。

スーツでは定番かつ人気のある柄で、クラシックなスーツによく使われる傾向があります。

遠目だと単色に見えますが近くで見ると深みのある色に感じます。
そのため、単色のスーツでも地味な印象を与えません。

シャークスキン
シャークスキン

3-3. シアサッカー

収縮率の違う糸を編み込むことにより生地の表面に凹凸ができます。

この凹凸により肌に触れる部分が少なくなり、さらりとした肌触りになります。

通気性が高く清涼感があるので、夏場のジャケットやパンツによく使われる生地です。

シアサッカー
シアサッカー

3-4. コーデュロイ

大きな畝(うね)が特徴で、秋冬には定番の生地です。

畝による凹凸の効果で生地と肌の間に空気の層ができます。

空気の層ができることにより、暖かい空気が外に逃げにくい構造になっています。

コーデュロイ
コーデュロイ

3-5. ヘリンボーン

ニシンの骨(Herring bone)のような模様が出るので、ヘリンボーンと名づけられました。

織り方は基本的に綾織と同じです。

上品なツヤによる高級感やほどよい厚みがあり、シワになりにくい特徴があります。スーツでは主に秋冬物に使われる生地です。

ヘリンボーン
ヘリンボーン

4. 柄別に生地の特徴を紹介

スーツの柄は主に無地・ストライプ・チェックがあります。

ここではストライプとチェックの特徴を紹介します。

4-1. ストライプ

ストライプのスーツは、ラインの太さや間隔により相手に与える印象が変わります。

細いストライプは繊細で上品な印象、太いストライプは力強い印象です。

また、ひと口にストライプといってもいくつか種類があるので、特長を覚えておくとスーツ選びの際に役立ちます。

ピンストライプ

ピンストライプ
ピンストライプ2

ストライプを拡大して見ると、多くの点(ドット)が並べられた線になっています。

線が細く間隔も狭いことからスタイリッシュで繊細な印象を与えます。

シャドーストライプ

シャドーストライプ
シャドーストライプ2

一見、無地にも見えますが、光の加減や角度によりストライプが浮き出るように見えます。

他のストライプより主張が抑えられるため、ビジネス上のどのような場面でも着ることができます。

しかし、生地に表情が出るため、無地よりもスタイリッシュな印象になります。

ペンシルストライプ

ペンシルストライプ
ペンシルストライプ2

鉛筆で書いたようなくっきりとした細いストライプで、華やかかつ知的な印象を与えてくれます。

チョークストライプ

チョークストライプ
チョークストライプ2

洋裁に使われるチョークで線を引いたようなストライプです。

また、ストライプの輪郭がぼやけていることも特徴の一つです。
イギリスのクラシカルな柄のため、落ち着いた印象や重厚感を与えることができます。

4-2. チェック

ストライプと同じようにチェックにもいくつか種類があります。
その種類と特徴を見ていきましょう。

グレンチェック

グレンチェック
グレンチェック2

細かな格子柄が集まることにより大きな格子柄を構成するチェック柄です。

スコットランド発祥のクラシカルな柄で、重たく感じさせないようスマートなシルエットで現代感を出すことが大切です。

ウィンドウペーン

ウインドウペーン
ウインドウペーン2

「窓のような大きい格子柄である」ことからウィンドウペンと呼ばれ、カジュアルな印象を与えます。
ジャケットでも、パンツでも映える柄です。

ガンクラブチェック

ガンクラブチェック
ガンクラブチェック2

濃淡のある2色以上の糸を使った格子柄です。イギリスの狩猟クラブで着用されていたのでこの名前が付きました。

クラシカルなジャケットやパンツに使われることが多い柄です。

5. 自分に合ったスーツの生地選びのポイント

自分に合ったスーツの生地選びのポイント

種類が豊富なスーツの生地ですが、自分に合う生地がどれなのかを見極めるのは難しいことです。

ここではスーツの生地をどのように選べばよいのか解説します。

5-1. 着用の目的を明確にする

まず、何のために着用するのかを明確にすることで選ぶ生地を絞り込むことができます。

下記を参考にしてみましょう。

  • ビジネス
    ツヤがあり、柄は控えめ、色はダークトーン
  • ビジネスカジュアル
    チェックや少し明るめの色でこなれ感を出す
  • プライベート
    ガンクラブチェックやペンシルストライプで華やかさを出す

5-2. 生産国の特徴をつかむ

国別の生地解説でも紹介しましたが、それぞれの国ごとに生地の特徴は異なります。
同じ国でも生地メーカーにより特徴は異なりますので、あくまで目安としてください。

イギリス生地に厚み・ハリがある
イタリア柔らかくしなやか
フランスハリがあり光沢感が強い
日本高温多湿に耐えられる高い機能性

5-3. 機能性を確認する

クラシックな生地は固さや重さが気になったり窮屈に感じたりする場合がありますが、最近ではストレッチ性のある生地、シワが付きにくい生地、ウォッシャブルな生地など機能性を持つ生地も増えています。

事前にどのような機能が欲しいのか考えておくと生地選びがスムーズになるでしょう。

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5-4. 着用の季節を考慮する

スーツに限らず、ファッションの世界では「季節感」がとても大切です。

どれほどおしゃれな服装でも、真夏に長袖長ズボンで厚い素材を身につけたり、冬に薄手の素材のスーツを着たりするのは違和感があります。

夏にコーデュロイやタータンチェック、冬にシアサッカーを着るのも違和感があるでしょう。
季節に見合った織り方や柄を選ぶようにしましょう。

5-5. お手入れの方法を確認する

お手入れの方法を確認する

みなさんは普段からスーツのお手入れをしているでしょうか。

「高級な生地は長持ちするけど安い生地はすぐにダメになる」と考えている方は多いようですが、実は誤りです。

高級な生地になるほど糸が細く繊細になるので、毎日のお手入れは欠かせません。
逆に安価でも機能性が高く長持ちする生地は増えています。

事前にお手入れの方法を確認し、自分がどれだけメンテナンスに時間をかけられるかを考えて生地を選びましょう。

6. まとめ

まとめ

生地は生産国・織り方・柄・色など選択肢が幅広く、知識がないと選ぶのが難しいものです。

しかし、「○○だからこの生地を選んだ!」と納得して購入すれば、スーツにより愛着が湧くはずです。

また、生地の知識まで身につけたうえでスーツを選んでいる方はそう多くはありませんから、スーツ上級者として一目置かれる存在にもなれるでしょう。

ぜひこの記事を参考に、自分の好みに合った生地を見つけてください。

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