スーツの基本知識と選び方のポイントと注意点
2023.05.10
この記事の所要時間:約8分
スーツにはルールという大前提があります。
基本を知らずに挑む応用や、アレンジはむしろ野暮に映ってしまうもの。
ここでは、スーツの基本知識と選び方のポイント、注意点について解説します。
スーツのコーディネート術について知りたかたはこちらをご覧ください。
1.一番初めに知っておきたいスーツジャケットの種類
スーツのジャケットは大きく3つの種類にわけられ、その形は着る人の内面を映し出すとされています。
それぞれが持つ出自や性格を知れば、より着こなしに深みが生まれるでしょう。
1-1.誰でも似合う定番、シングルブレスト
シングルブレストとは、前のボタン配列が一列になったデザインのものを指します。
現在のスーツジャケットの主流であり、万人に似合う定番的存在。
主に2つボタンと3つボタンがあります。
1-2.クラシカルな印象を与えるダブルブレスト
折り重なった重厚感ある雰囲気がダブルブレストの特徴です。
前見頃のボタン配列が2列になり、ボタンの数も6つボタンの2つかけ、4つボタン2つかけなどさまざまなバリエーションが存在します。
身体つきのがっしりとした人がよく馴染むと言われています。
1-3.ジャケット、ベスト、スラックスがセットになったスリーピース
「三つ揃え」と言われるなど、ジャケットとベスト、そしてスラックスで構成されるスーツのことを指します。
フォーマルな印象を与えます。
基本的に中に着こむベストはジャケット、スラックスと共地が原則。
ジャケット、スラックスという通常のスーツを「ツーピース」と呼ぶこともあります。
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2.スーツに関する基本用語
物を作る上で設計図は必要不可欠です。
スーツは普段着ている洋服以上に複雑な工程を経て生み出されています。
それぞれの仕様やディテールは、古くから伝わるさまざまな専門用語が並ぶのです。
大見返し、ゴージライン、雨降らし。
まるでポエムのようなそのラインナップをしっかり把握すれば、達人への道も近し。
ここでは、基本を中心に代表的な専門用語をピックアップしてみました。
2-1.わずかな違いが、全体の印象を左右するジャケットのディテール
肩から胸にかけての美しいライン。構築的なシルエット。
ジャケットほど複雑な設計図を持つ服はないのではないでしょうか。
ラペルの先のデザインや裏地の仕上げなど細かい違いが数多く存在します。
ディテールを知れば、より繊細なスーツ選びができるようになります。
①上襟(カラー)
襟刻み(ゴージ)によって区切られる上側の襟のこと。下襟ほどバリエーションはありません。
②飾りボタン穴(ラペルホール)
下襟(ラペル)に付いている襟穴のこと。この部分に花を挿していたことから、「フラワーホール」とも呼ばれます。
③胸ポケット(チェストポケット)
ジャケットの胸の位置にあるポケットのこと。ブレストポケットと呼びます。
④前ひだ(フロントダーツ)
前身頃の胸から腰にかけて、縦に入っているつまみ縫いのこと。ここでは、ウエストの絞り加減を調整しています。
⑤前裾(フロントカット)
ジャケットの前裾の形のことを指します。大きくは丸形と角形の2種類があり、スーツ全体の雰囲気にも影響するディテールです。
⑥襟刻み(ゴージ)
カラーとラペルの縫い目線のことを指します。流行により位置や角度が変化。スーツの印象を決める大切な要素です。
⑦下襟(ラペル)
代表的なラペルには、ピークドラペル、ノッチドラペルがあります。印象を左右する重要なデザイン要素です。
⑧脇ポケット(サイドポケット)
脇の縫い目を利用したポケット。パイピングポケットやフラップポケット、チェンジポケットなど、さまざまな仕様があります。
⑨カフ
ジャケットの袖口のこと。「本切羽」や「開き見せ」など、さまざまなバリエーションがあります。
⑩ボタン
基本的に、スーツのボタンは全部留めません。2つボタンスーツは上ひとつだけ、3つボタンなら一番上と真ん中の2カ所。段返りの3つボタンは真ん中のみ留めます。
2-2.後ろ姿を左右する、ジャケットのディテール
後ろのシルエットも美しさの重要な要素のひとつ。
中でも特徴的なのがセンターに設けられたベントと呼ばれるスリットです。
スタイルやデザインに応じて細かな仕様をもっています。バックシャンという言葉があるように、スーツは後ろ姿にも気をつけたいものです。
①アームホール
身頃側の袖をつなぐ、腕を通す穴のこと。着心地はもちろん、見た目の印象にも大きく関わってきます。
②袖付け
スーツのシルエットに印象を作る大切なディテール。袖山がわずかに盛り上がっているビルドアップショルダーはブリティッシュスタイルのスーツに、丸く綺麗に落ちるナチュラルショルダーはイタリアのスーツに見られます。
③ベント
後身頃の裾のディテールを指します。切れ目が中央にあるものを「センターベント」、両脇にあるのを「サイドベンツ」と言います。また、背縫い線からのラインがセンターベントとの接地点でカギ型に曲がっている「フックベント」、ベントがない「ノーベント」もあります。
2-3.わずかな差異がシルエットを変えるスラックスのディテール
イタリアではスラックス専門のブランドがあるほど奥が深いもの。
生地はもちろん、アイロンワークやちょっとしたディテールの差が全体のシルエットに大きく左右します。各部の名称を知れば、スラックスの魅力がさらに理解できるはず。
美しきシルエットはもう手に入れたも同然です。
①ウエストマン(ウエストバンド)
ウエストをホールドするベルト状の部分のこと。フロント部分にはトップボタンがつけられ、周囲にはベルトループが縫いつけられています。
②前ひだ(タック)
腰回りにゆとりを作るための縫いひだのこと。本数や、タックの向きが外向きか内向きかで微妙に印象が変わります。
③ベルトとおし(ベルトループ)
ウエストバンドについた共地のベルト通しのこと。通常、1cmぐらいの幅のものが、全部で7、8本つくのが一般的とされています。
④時計隠し(ウォッチポケット)
スラックスの右側につく、小型ポケットのこと。かつて懐中時計を入れていたことから、ウォッチポケットと呼ばれています。
⑤股上(ライズ)
ウエストから股までの長さのことで、最近では、股上が浅いローライズタイプのスラックスがトレンドになっています。
⑥折り目(クリース)
スラックスの中央にアイロンで入れられた折り目のこと。クリースがしっかりとつけられていると、足のラインが美しく見えます。
3.スーツ選びのポイントと注意点
スーツ選びの常識 まずは自分のサイズを知りましょう。
オーバーサイズ、タイトフィット。普段着はトレンドやその時の気分でサイジングを変えていた人も多いと思います。
しかし、スーツだけは特別。時代がどんなに変わってもジャストサイズこそが一番良いとされています。
シャープで構築的なシルエットは、フィット感が重視された賜物なのです。
ここでは部位別にフィッティングの注意点を挙げました。
スーツを購入する際に必要不可欠なポイントをおさえましょう。
3-1.肩幅まわりに重みが均一だと着心地が軽い
もっとも重要なのは上着の肩幅。自分の肩幅とぴったり合っているものは、スーツの重みが均等に肩に乗り、軽い着心地が得られます。
3-2.袖口はシャツが少し出るくらい
スーツの上着のそで丈は、両手を自然に下ろしたときにシャツの袖が1.5〜2.0cmくらい見えるものが、美しい長さとされています。手首の骨の出っぱりに指を1本あてたくらいのあたりがおおよその目安です。
3-3.胸まわりは手の平が入るくらいの厚みを
適度な厚みを感じさせるのが綺麗とされている胸まわり。Vゾーンのあわせ部分から手の平が入るくらいのゆとりを作りましょう。
3-4.ウエストはある程度余裕を持たせてもOK
腰骨にぴったり沿っているものが理想的なウエストですが、立ったり座ったりする動作が多い方は、軽く手が入るくらい(おおよそ4cm)の余裕を作ったほうがいでしょう。
3-5.着丈は指を曲げてつかめるくらい
着丈はお尻がちょうど隠れるくらいが理想的です。もしくは、腕を真下に下ろして、指の第1〜第2関節を軽く曲げて、つかめるくらいの丈が適切ともされています。
3-6.裾丈はスーツに合わせる靴を履いてチェック
一般的に、スラックスの前裾は甲の上にワンクッションかかる程度、後ろ裾はかかとから1〜2cmが適切。スーツに合わせたい靴を履いて試着するのがベターです。
4.まとめ
スーツの基本知識と選び方のポイント、注意点について解説しました。
スーツを選ぶ際は、以下の特徴から与えたい印象を基に選びましょう。
- 誰でも似合う定番のシングルブレスト
- クラシカルな印象を与えるダブルブレスト
- フォーマルな印象を与えるスリーピース